第49話
といっても、地下には侵入しない――広場でどんちゃん騒ぎしている連中の目の前を通ることになるし、リーシャ・エルフィはともかくバスに乗っていた者たちはライに気づいたら大騒ぎするだろう。
なにより、侵入してもやることが無い――その場でリーシャ・エルフィを連れ出せるのなら試みる価値もあるだろうが、それは無理だろう。
監禁場所を設定する鉄則はふたつ――ひとつは自力で抜け出せない場所に幽閉すること、もうひとつは監禁場所から外に出るために必ず監禁者のいる場所を通過しなければならないこと。おっとついでにもうひとつ、前述のふたつの条件を両方とも満たしていること。
彼女のいる牢獄は施錠されており、鍵を持っているのが誰かはわからない。さらにライが彼女を連れ出すためには、賊が乱痴気騒ぎをしている広場を通過しなければならない――目を盗んで近づくには数が多すぎる。
この状況は鉄則を両方満たしているので、少なくとも今すぐに彼女を連れ出すことは出来ない――さらに鉄則には監禁場所を拠点の一番奥に設定すること、監禁場所の近くに近づくと騒ぎ出す動物を配置することという附帯事項があり、この状況はそれらも満たしている。
近づくと騒ぎ出す動物、具体的には犬や
仮に賊たちが完全に寝入ってしまっていたとしても――ライが砦に侵入してリーシャ・エルフィを連れ出すのを見つけたら、学生たちは自分たちも連れ出せと大騒ぎするだろう。人質がいなければライひとりで賊を殲滅することも出来るが、ひとりでリーシャ・エルフィを守りながら脱出するのは少々骨だ。
今この場でリーシャ・エルフィを連れ出すことが出来ない現状において、この
先述したとおり王女拉致の実行犯は約三十人――人数が多いのは、初手で確実に護衛部隊を針鼠にするためだろう。人数と練度で上回る相手を確実に仕留めるには奇襲の要素 、それに初手でどれだけの損害を与えられるかが重要になる。
そしてそれは成功している――先の目算どおり砦に残って待機していた人間もいると仮定して、砦の内部の
この作戦における最大の問題点は、敵の数に対して味方の数が少なすぎることだ――広場の敵を制圧しつつ、リーシャ・エルフィに危害が加えられない様に人員をつけ、かつ上下二階層に分かれた上層の構造物を
致命傷を与えるか、最低限抵抗能力を奪う程度まで――
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