第25話
「なんだ?」
「火の粉でも飛んだのか?」
「まずい、火を消し止めるぞ」 賊たちがそんな遣り取りを交わし、何人かが南西の壁際の荷馬車の周りに立てた樽のほうへと小走りに近づいていく。残りの者たちは座り込んだままだったり眠りこけたりしていて反応が鈍い――装備品の状況に注意が行っている者もいる様だが。
よし――敵の注意が
まずは誰から狙うか――水を汲みに行った男でもいいが、先ほどまでは炎の陰になって見えなかった焚き火の向こう側にいる男が立ち上がり、頭部が視認出来る。よし、君に決めた。
引き絞った弦を放し、矢を撃ち放つ――ひゅっという軽い風斬り音とともに飛んでいった矢が鏃の金属部分で蒼褪めた月の光を照り返し、
次の瞬間ダンッという音とともに金属製の鏃が賊の頭蓋を撃ち砕き、頭部を射抜かれた賊がそのまま地面に膝を突いて炎の上に覆いかぶさる様にその場で倒れ込んだ。
「なんだ!」
「撃たれたぞッ!」 賊の何人かが仲間に警戒を促しながら立ち上がるが――残念ながら酒のせいで足がふらついている。緊張しているつもりでも、大量のアルコールのせいで脳がきちんと働いていないのだ。
まずひとり――これで彼らはまず
だが焚き火の炎をずっと見続けていたために闇に慣れていない目は、そう簡単にはライの姿を捕捉出来まい。兵舎の構造物に遮られて、
新たな矢をコンパウンド・ボウにつがえ、ぎりりと音を立てて弦を引き絞る――次の
上体を傾けて壁上通路のへりから身を乗り出す様にして照準を定め、コンパウンド・ボウの弦を放す――カタンというパラレルリムの動作音とともに撃ち出された矢が焚火のそばで事切れた仲間に注意を向けていた賊の頭に突き刺さり、その体を横殴りに薙ぎ倒した。賊の屍に寄りかかられて水樽のひとつが倒れ、ざばっと音を立てて内容液を地面にぶちまける。
「おい――」 すだれ禿に続いて水樽に駆け寄っていたつるっ禿の男が水樽を巻き込みながら転倒したすだれ禿のほうを振り返りながら声をあげ――次の瞬間頭部に矢を射込まれて、もんどりうつ様にしてその場で崩れ落ちた。
これで三人目。さて、次は――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます