第28話
高台は東西は伝説の通りであれば数百キロ、南北の幅は約二キロ。スケールの違いを無視すれば、堤防に近い形状だといえる。高低差は今登ってきた北側は約四百メートル、南側はおそらく六百メートル弱――五百七、八十ほどか。勾配はほぼ一定で、角度は見たところ四十度から四十五度程度の間。いったん降りたら登るのには苦労するだろう。
高台は
高台上は石畳などで舗装されているわけではなく、地面が剥き出しになっているので、樹海のものと違う樹高三十~四十数メートル程度のごく普通の樹高の木々がところどころに
樹海と違って日当たりがいいことから、疎林の木々やその下草のおかげで隠れ場所には不自由しない。ただくだんの砦の近辺はライの記憶が正しければ石畳で舗装されており、最接近するには注意が必要になる――ライの期待通り、全員で酒盛りに興じていてくれれば別だが。
「砦は見えないですね」 その場に折り敷いたまま、ガラがそんなコメントを口にする。
ライはその言葉にそちらに視線を向けてから、
「直接接近はしたくなかったからな、まだ先だよ――といってももうそんなに遠くない。いったん偵察に出る――君らはここで待機。メル、君もここで待て」 そう言いながら、ライは外套を脱いでコンパウンド・ボウを
「わたしも?」 不服そうな様子のメルヴィアを振り返って襷がけにしていた鞄を渡し、ライは目を細めた。足元の土を手ですくい、
「これをしたくないんだったら、駄目だ」 体に土をなすりつけろと言っているのだが、メルヴィアにも当然その意図は伝わった様だった。
「暗がりに隠れれば、わたしのほうが目立たないよ」 胸元に手を当てて、メルヴィアがそう返事をしてくる。
「駄目だ」 メルヴィアの返事を、ライは即座に切り棄てた。なるほど、褐色の肌は暗がりにもぐり込めば黄色人種のライよりも目立たないだろう。巧くもぐり込めればの話だが――そしていつでも、都合良く隠れられる掩蔽物があるとは限らない。
あらためて胴衣の襟から剥き出しになった首と顔に土をなすりつけながら、
「人種は関係無い――剥き出しの皮膚は光を反射する。これをして反射を抑えるつもりが無いなら、来たら駄目だ――なにを探せばいいかをわかってる奴がいたら、即座に発見される」 それにライのそれと違って、メルヴィアの外套は染色されていない――
「背中を塗るのを手伝ってくれ」 その言葉に、ガラが真っ先に立ち上がる。
「この外套もか?」 足元の土を一握り掴み取って聞いてきた年配の兵士に、小さくうなずく。
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