第12話 連行なんて認めない
日差しは益々きつくなり始め、額からは汗が流れ落ちる。
蜃気楼が見える中、俺と少女は二人運び行く色とりどりの大きな箱を眺めていた。
ガタイのいい男達が俺をチラ見しながら荷物を運んでいる姿に少女は不審な視線を向ける。
「いったいさっきから何だというの?」
「さ、さぁ…… なんでしょうねぇ」
思い当たるのは俺に付加された能力【魅了(同性)】の影響だろう。
俺を見る視線はアレだ。 少女漫画とかでよく見るカッコイイ先輩を偶然帰り際に見た女子生徒だ。
いや、あれですよ。 男が少女漫画読んだっていいじゃないですか、愛読書は『君に〇け』や『ちはや〇る』なのは是非内緒にして頂きたい。
というか、俺まだここに居る必要ある? 帰っていいかな?
不機嫌そうな少女は俺を睨み上から下までジロリと眺める。
「貴方、名前は?」
な、名前!? えっとまてまて落ち着け俺。
この世界の人達は海外の人のような名前が多い。 ここで俺が日本人丸出しの名前を言ってみろ。 即怪しい奴だと思われて連行されかねない。
なんとか穏便に済ますために頭を冴えわたらせ適切な言葉を選ばなければ。
俺が知ってる海外っぽい名前……
この間わずか0.2秒。
「江戸〇コナン」
ミスったァアアアアアア!!!! 思いっきり考えすぎて何も浮かばなかった結果がこれだ。 思いっきり江戸〇言うてるし、あわわわわ……
せやかて工藤、俺もこんな少女に見つめられて焦ってたんや許してーな。
って、それ服部やないかーい。
かーい。
「ふぅん。 不思議な名前ね、覚えておくわ。 私の名前はクリムゾンよ。 この部隊を仕切ってる一応隊長の身ではあるの。 まぁ、この用がすんだらこの街には用はないのだけれど。 なに? 不思議そうな顔して、名乗られたら名乗る、それが礼儀ってものでしょ?」
いや、まさかこの子がこの世界のラスボスなのか!?
こうしてる間にも俺の動きをスローモーションで把握し、俺が気づいた時には時間が飛んでる……
この見た目に騙されていた。
すでに俺達の動きは読まれ、ここで俺と話すことも想定内だったというのか!?
対抗するためには俺がザ・ワールドを発動しなければ手立てが……
「ちょっと、話を聞いてるの?」
「あ、はい。 なんでしょうかキン〇クリムゾンさん」
「何を言ってるの? 私の名前はクリムゾンよ! クリムゾン!変に付け足さないでくれないかしら」
良かった。 人違いらしい。
「それで、何で私が来るとあらかじめ言っているのにこんなにも人が少ないのかしら、前に来た際はもう少し大人がいたはずなのだけれども」
今運んでる箱の中にぎゅうぎゅうに押し込まれてるなんて口が裂けても言えないな。
さすが隊長を任されるだけあって感が鋭い。
「大人達は総出で狩りに行ってるんですよ。 食材を集めるのも一苦労で」
「狩り…… ねぇ…… ちなみにこのあたりは何がいるの?」
「ディアブロス」
「は?」
「間違えました。 猪です。 猪! あと鳥もです。 貴重な食材ですからね、大人たちが帰ってきたら今夜は豪華な食事だ。 いやぁ肉なんて久しぶりで」
あぶねぇええええ!! 狩り=砂漠=ディアブロスの公式が出来上がってたわ!!
すぐにゲーム脳から離れるんだ俺!!
「そう。 おかしいわね、この辺りには動物なんていないのに」
「へ?」
「この砂漠の熱気を知らないわけないわよね。 日中の最高温度は40℃を軽く超え水も限られた場所にしか存在しない。 ここは地下水脈があるらしいけれど、そんな砂漠に猪なんかが住んでると思う?」
「で、ですよね……」
少女は訝し気な視線を上げ、運び終わったと思われるガタイのいい男達に指示を飛ばす。
「このコナンっていう人も連行してちょうだい」
「ふぁっ!?」
頷いたガタイのいい男達は俺を取り囲むと俺を力づくで抑え込み、大型のトラックのような車へと運んでいく。
「ちょっと待て! 止めろ!? ってどさくさに紛れてどこ触ってんだ!!
嫌だ。 行きたくない!!」
「喚いても無駄よ。 貴方が何者なのか、要塞でじっくり聞いてあげるわ」
放り投げられた先はトラックの荷台。
投げられた瞬間、宙を舞う中俺は目にしてしまった。
トラックのような車に書かれたロゴは……
IZZU
ここもパクってるやないかぁあああああああ!!!
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