03-04 事故紹介と謎の美女

「えっとお……っとお……小寺悠真です……喫茶店でアルバイトしてまあす……趣味はパソコンをいじる事です……」

別に彼はふざけているわけじゃない。完全アウェイの中に放り込まれているので、ガチガチに緊張しているのだ。

「シリ……いや悠真は、パソコンとかにとても詳しいんだ。」

シムは、悠真をフォローするかのようにそう付け加えた。

「……」

彼は赤面しつつ着席した。


***

男性陣の自己紹介が済んだあと、女性陣の自己紹介に移った。先に自己紹介した二人は、どれも別に美人でもなく可愛くもなかった。いまいちだ。悠真がそう思った時、最後の一人の自己紹介が始まった。

「マリアです……K大学の二年です……よろしくお願いします……」

そう自己紹介した女性に悠真ら男性陣は目が釘付けになっていた。マリアと名乗った彼女は、先に名乗った娘達よりも一線を画する美女だったからだ。悠真は彼女をまじまじと見た。向かいに座る彼女は、髪はウェーブのかかった茶色の長髪で、ほっそりとした体格で、日本人離れした顔立ちだった。海外の人かな?いや、ハーフかな?悠真がそう考えながらふと前を見ると、マリアが彼の事をじっと見ていた。その目は芯の強そうな澄んだ瞳だった。

「……」

悠真はドギマギしながら顔を背けた。


***


そうこうしているうちに、合コンは佳境を迎え、ほとんどの出席者たちは仲良くなった人と連絡先の交換に興じていた。そんな中で誰とも仲良くなれなかった悠真は、ただ何もする事もなくその場に立ち尽くしていた。退屈だ。そう思ってると、横から誰かこう話しかけて来た。

「あの……小寺くん……だっけ……ちょっと来てくれないかしら……話したいことがあるの」

悠真は相手の顔を見て驚いた。声の主は、シム曰「今回一番の注目の的」と言われたマリアだった。

「え……いいですけど……」

彼は高鳴る胸を押さえながらそう返した。それに対し、マリアは周りを見回しながらこう言った。

「そうね……ここで話すのもなんだし……後で別の所でお話しましょう……」


***

合コンがお開きになった後、居酒屋を出た悠真とマリアは、駅前を少し離れた路地にある小さなホテルのレストランに入った。

「すごいおしゃれなところですね……」

まだ緊張が解けてない彼は、手のひらにびっしり汗をかいていた。

「でしょう……ここのコーヒー、とてもおいしいのよ」

マリアはメニューを広げながらそう言った。

「そうですか……」

悠真は緊張を解くため、運ばれてきたお冷をゴクリと飲み干した。そして、少し冷やされてクリアになった頭で、彼女とどう話そうか思いを巡らせた。パソコンの話をしようか。それとも最近読んだ本の話?そういう考えをしているうちに、ウェイターがコーヒーを二つ持ってきた。彼はそれらをテーブルに置いた後、ごゆっくりとひとことだけ言ってはけて行った。


***

「……」

「……」

ウェイターが去った後、二人の間には少しの沈黙が横たわっていた。お互い話を切り出すタイミングを伺っているのだ。

「あのお……」

それを最初に破ったのは悠真だった。

「話って……なんですか……」

それを聞いたマリアはあの澄んだ瞳で彼の目をじっと見つめながらこう言った。

「小寺くん……あなたって、パソコンに詳しいのよね……」

「はい……」

彼女の圧に押され、悠真は思わずそう答えた。

「なら、私の話に乗っかってくれるわよね……?」

「それって……」

彼がそう言うと、マリアは待ってましたとばかり

にこう言った。

「小寺くん……私と組んで、マルウェアの闇市場を潰して欲しいんだけど……協力してくれない?」

「えええええっ⁉︎」

悠真の驚きの声が店内にこだました。


(つづく)

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