02-15 報復


沙耶の想いを汲み取ったシリウスは、そっと頷くと、しゃがんでデータのかけらを両手を使って集め、先程のと同じ小さいカプセルに入れた。

「あれを使って何をするの……? 」

彼女のその質問に対し、シリウスはこう答えた。

「まあ、見てろって」

彼は、それをまたクラちゃんに渡すと、ハルにダイヴ解除を命じた。

「了解、今からダイヴ解除するのです」

彼女のその声を聞きながら、シリウスは目を閉じ、気分を落ち着けた。


***


悠真がそっと目を開けると、そこは、カプセルの中だった。現実世界にもどってきたのだ。

「さて、と……」

HMDを外した彼は、ゆっくりと起き上がりつつ、カプセルの蓋を開けた。

「おやっさん、戻ったよ」

「悠真、おつかれさん」

「小寺くん……!」

カプセルから出た悠真は、ゆったりとした足取りで、剛や沙耶たちがいるコンソールの手前まで来ると、こう言った。

「ハル、さっきのやつは届いたか?」

「はい、届いたのです!」

ハルは小カプセルを手に乗せながらそう答えた。

「よし、それをアレにかえてあいつのところまで送ってくれ。」

「了解なのです!」

悠真の命令に、彼女は元気よく答え、作業を始めた。

「今から何をするんですか?」

この一部始終を沙耶の傍でずっと見ていた了は、剛にこう言って少し目配せをした。

「少し物騒な言葉に言い変えれば……報復、といったところかな……」

「……と、いうと」

了はごくり、と唾を飲んだ。彼には、剛が言わんとしている事がもうわかっていた。

「今から君の彼女さんの想いを叶えるのさ……」

「……」

了はごくり、と息を飲み、目の前の悠真の背中を見た。

「すごい……本当にすげえよ……」

この人はすごい。自分にはできない事をやってのける。彼は年下の悠真を尊敬の眼差しで見つめた。

そうしてるうちに、ハルは作業の完了を悠真と剛に報告した。それを聞いた悠真は満足げにこう言った。

「これでよし、と」


***


翌日の午前六時半。

伊能仁は、いつものように朝を迎えた。少し伸びをしてから、寝床から出た彼は、毎朝の日課であるランニングを終えた後、朝食をつまみながらメールアプリを開いた。受信ボックスのトップには、ポムピーを偽装して妹の沙耶のスマホに忍ばせたスパイウェアから送られてきたデータログが鎮座していた。仁は鼻歌混じりにそれを開いた。すると、画面が一度真っ黒になり、しばらくするとまた戻った。

「な……なんだ……? 」

彼は不安になり、周りを調べたが、特に変化はなかった。まっ、いいか。彼はそう思い、アプリを閉じた。この時、彼は知らなかった。この後自分に恐ろしいことが降りかかる事に……


(続く)

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