02-12 正体


鎧の戦士-シリウス-は初めて見るフィールドを、しげしげと見渡した。ここは、沙耶のスマホの中なのだ。無事ダイヴできた事を確信した彼は、頭部を覆うフルフェイスヘルメットの側面のボタンを押した。

「ハル、すごいなぁ……まさかスマホでもフィールド生成できるなんて……」

「えっへんなのです!私にかかればこれぐらい朝飯前なのです」

ハルは、ヘルメット内のスピーカー越しにそう得々と鼻を鳴らした。その声から伝わってくるしてやったり感にシリウスは、ははは……すごいね、と乾いた笑いを返すしかなかった。


***


フィールドの中を進むと、SNSやカメラなどのアプリのアイコンがついた円筒状の構造体が立ち並ぶ一帯にたどり着いた。シリウスは一度立ち止まって考えた後、再びヘルメットのボタンを押してこう言った。

「おやっさん、まずどこから見ればいい? 」

「そうだな……まずメッセージアプリから見てくれ」

「了解!」

彼はそう言うと、メッセージアプリの中に入っていった。


***


「……」

メッセージアプリの中に入ったシリウスは、まず受信ボックスを開いた。過去のメッセージを弄っていると、簡単に例のメッセージを見つけることができた。彼はそれをそっと開いた。

「ふむ……」

メッセージの送り主の名義は了になっていた。

「きっと、アカウントが乗っ取られてるんだな……」

そう言ってメッセージアプリを出たシリウスは、まっすぐポムピーのアプリへ向かった。


***


ポムピーアプリの中に入ったシリウスは、ピコピコという音を耳にした。この音が何なのか、彼には解る。サイバー空間でプログラミングとかの入力作業をする時に使う仮想コンソールの音だ。気配を消しながらシリウスは慎重に進んだ。彼はゆっくりと進みながら物陰から向こうを見た。

「……!!」

そこで見たものは信じがたいものだった。シリウスはヘルメット内のインターフェースを共有モードにした。


***


その画面に写っていたのは、沙耶にとって馴染み深いものだった。

「ポム太郎……?」

彼女のポムピーであるポム太郎である。そのポム太郎が丸っこい背中を見せながら、何か作業をしている。カメラーシリウスの目線ーが近づくと、何をしているのがありありと見えた。

「……っ」

沙耶はポム太郎のしている事を見て閉口した。ポム太郎は傍らに置いてあった彼女の通話履歴やメッセージログをメールに添付して何者かに送っていた。その表情は普段の可愛い顔から想像できない凶悪なものだった。

「嘘……ポム太郎が……そんな……」

沙耶が頭を抱えうわ言のように呟いていると、こちらに気づいたのか、ポム太郎がゆっくりと振り向いた。

「見たな……」


(続く)


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