02-10 危機


ショックのあまり、気付けば沙耶はそのまま駆け出していた。

「……」

駆けに駆け抜けてたどり着いた自宅の玄関で、彼女はそのままその場に崩れ落ちた。

「怖い……助けて……了くん……」

沙耶は震える手で、了に電話をかけた。


***


「はい……」

スマホのスピーカーから了の声が聞こえると、彼女は強張っていた肩の力を抜いた。

「了くん……」

「どうした……?」

「……」

「おい、本当にどうしたんだ……相談なら俺がのるから……」

その優しい言葉に沙耶の目からは次々と涙が溢れ出した。

「……っ……了くん……あのね……」

彼女は涙ながらにさっきのことを話した。


***


「……」

沙耶が全てを話し終わった後、二人の間には重苦しい沈黙が横たわっていた。それを一番先に破ったのは了だ。

「沙耶……俺、お前におあつらえ向きのいい相談先知ってるんだ……明日連れてってやるよ……」

「相談先……? 」

彼女は涙でぐしゃぐしゃになった顔をあげて言った。

「大丈夫……そこに行けばなんとかなるかもしれない……」

「ありがとう……」

大丈夫。その言葉が沙耶にとって心強かった。


***


次の日の夕方。了は、沙耶を連れて昨日来た喫茶店を再び訪れた。

「本当にここなの? 」

そう半信半疑そうに言っていた彼女は、中に入るなり声を上げた。

「小寺くん……!」

「小寺くん……?」

了が沙耶の視線の先を見ると、あの若い店員が昨日同様、トレーを片手に立っていた。彼は、少し居心地の悪そうな顔をしていた。

「知り合いなのか……? 」

了がそう聞くと、彼女は無言で頷いた。その反応を見ると、彼にはどういう関係なのかだいたいわかった。

「わかった……こないだ言ってた高校の同級生ってこいつなんだな……」

そう言うと沙耶は恥ずかしそうに俯いた。

「とりあえず……席にどうぞ……」

そんな二人のやりとりを見た店員はばつが悪そうな顔をしながらそう言った。


***


二人を席に通した悠真は、コーヒーを淹れながらため息を吐いた。彼の例の恋人がまさかの伊能さんだなんて。まさか、彼女を取られるなんて思われてないだろうな。そう思いながら、二人分のコーヒーをトレーに載せた。


***


ちょうど買い出しから帰って来た剛を交え、四人は席に座った。沙耶は剛と悠真に改めて、昨日のことを話した。それを聞いた二人は、顔を見合わせ、これだと言わんばかりの表情で頷いた。

「お客さん……昨日の彼氏さんの話と今日のあなたの話から察するに……おそらくそれはアプリの皮を被ったスパイウェアの可能性がありますね」

「す……スパイウェア⁉︎ 」

沙耶は椅子から転げ落ちそうになった。


(続く)

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