02-07 ポムピー
沙耶は、メッセンジャーアプリの画面を見るなり目を見開いた。
「え……? 」
画面に表示されているメッセージにはこう記されていた。
__
Ryoさんがあなたにポムピーに招待しているよ!いますぐ下のリンクをタッチ!
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「……」
底抜けに明るいタッチのメッセージに押され、リンクを踏もうとした沙耶は、その指を止めて暫し考え込んだ。
「これ……大丈夫なのかな……」
彼女はメッセージをじっと見つめた後、こう呟いた。
「まっ……いいか」
沙耶は一呼吸置いてからリンクを押した。
***
リンクを押してから、まず通されたのはアプリのDLページだった。ここでも彼女は迷わずDLボタンを押した。了くんが誘っているんだから、絶対大丈夫。彼女の脳裏にはそういう確信があった。DLが終わると、沙耶はすぐさまそれを開いた。すると、画面にメールアドレスを登録するフォームが現れた。アドレスを入力し、登録ボタンを押すと、すぐにメールが返ってきた。
***
メールに添付されていたリンクを押してまず現れたのは、白画面をバックにコロコロと左右に転がるピンク色の卵だった。それをタッチすると、卵がパカっと割れた。
「……っ!! 」
その中から現れたものを見て、沙耶は言葉を失った。
それは、丸っこいボールのような体に猫耳がついた得体のしれない生き物だった。ポムピーの幼体である。
「かっわいいーっ! 」
あまりの可愛さに彼女はふとんの中でコロコロ転げ回った。
***
しばらく転げ回った後、沙耶は我に返って起き上がってこう言った。
「あっ……そうだ……名前つけなきゃ」
彼女は設定メニューを開き、名前の項目を選択した。
「どうしようかな……」
そうブツブツ呟きながら一、二分ぐらい部屋の中を歩き回った後、閃いたように立ち止まった。
「ポム太郎……これよ! 」
沙耶は名前欄にポム太郎と入れた。名前をもらったポムピーは嬉しそうに笑った。
***
ザイオンの店頭で、剛はタブレットで何かを見ていた。
「ほう……」
コーヒーを啜りながらそう呟いていると、後ろから悠真が話しかけてきた。
「何見てるんですか? 」
剛はゆっくり振り向くとこう言った。
「サイバーセキュリティ専門のニュースサイトだよ。 」
悠真は叔父の右肩越しにタブレットの画面を見た。それには、<スパイウェアの罠>という見出しがあった。
「スパイウェア……ですか……」
彼がそう呟くと、剛はマグカップを机に置いてこう言った。
「最近のスパイウェアは、今までのものよりもかなり高性能らしい……この記事によると、ゲームアプリだとかに偽装してるものがあるそうだ……」
「ふーん……」
悠真はそう返事をしつつ、タブレットの画面を見つめていた
。
(続く)
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