02−05 サイバー犯罪課
「ねえ……かっこよくない? 」
「うん……」
ここは警視庁の総合庁舎内にある食堂。その隅で警察官の制服を来た二人の女性がささやきあっていた。その視線の先には、妙に姿勢のよい白シャツ姿の男がいた。男は、ここの人気メニューであるレバニラ定食を優雅に食していた。
「やっぱりかっこいいよね……伊能刑事」
「食べる姿も絵になってる……素敵」
あまりに素敵すぎて、彼女達の目はハートになっていた。
***
「伊能先輩……いつもかっこいいなぁ」
廊下を颯爽と歩く彼の姿に、大量の書類を抱えながら見とれている
***
荷物を持ったまま、ボーっとしていた新は、突然肩に衝撃が走るのを感じた。
「ふぇえっ!? 」
情けない声を上げながら振り向くと、彼の上司である
「き……北原さん」
薄茶色に染めた長めの髪を一つに纏めた黒スーツ姿の彼女は、低めでハスキーな声で彼にこう囁く。
「井深くん……貴様たるんどるぞ……さっさと仕事に戻ろうか……」
「はっ……はいいっ……! 」
ヤンキー並みにすごみのきいた声は、大の大人である新をおおいにビビらせた。彼は書類を抱え、一目散に走っていった。
***
新達サイバー犯罪課の持ち場は、庁舎の地下セクションの中にあった。科捜研や鑑識の部屋の前を通り過ぎ、さらに奥に行くと、<サイバー犯罪課>と書かれたマグネットが貼られたドアがある。それを開けると現れる巨大なコンピューターが鎮座し、それ以外にはシンプルなスチール製の机とパイプ椅子しかない空間がサイバー犯罪課のすべてだった。
「この殺風景な空間……もうちょっとどうにかならないものか………」
書類を机に置きながらそう言うと、どこから声が聞こえてきた。
「殺風景なんて……失礼にも程がありますわ……」
(続く)
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