01−12 喫茶店にて (rprise)

「あの……悠真……さん」

悠真に蘭がそう話しかけてきたのは、彼が脱衣所から出て来た時だった。

「何?」

悠真がそう言うと、彼女は深々とおじぎをしてこう言った。

「助けていただいてありがとうございました……もし悠真さんがウィルスを退治してなかったら、私は今頃大変な目にあってました……」

それに対し、悠真はこう返した。あの時と同じ笑顔で。

「いいんだよ……俺はただ当たり前の事をしただけだから」

「……」

「……っ」

蘭と麻里がそんな彼にキュンとしてると、後ろからマスターがこう言って来た。

「えーと、蘭ちゃんだっけ……お取り込み中ちょっと聞いていいかな……君が通っている高校を犯人が特定できた……っていう事はSNSとかにあげた写真で個人や学校を特定できるものが写っていた可能性がある……なんか心当たりないか? 」

「え……? 」

彼女は考え込んだ。そして少しの沈黙の後、いきなり短い悲鳴をあげた。

「ああっ! 」

「おっ、やっぱりあったか」

顔面蒼白で俯いている蘭に悠真は優しく話しかけた。

「話してごらん……怒らないから……」

その言葉に勇気付けられたのか、蘭は顔をあげてこう言った。

「saezuritterでたまに収録風景や雑誌の取材風景をあげるんですが……その写真の中に学校の指定カバンが校章ごとバッチリ写っているのがあったんです……」

「それはいけないな……」

悠真はやれやれといった感じで頭をかいた。

「最近は写真から個人情報や着ている服のブランド

を特定する奴ら……いわゆる特定班という連中がいるんだ……犯人は掲示板とかでそいつらから学校の情報を得たんだろうな……」

「……」

「とにかく、二度とこんな目に遭わないためには、個人情報を特定できるものをSNSにあげない事だ」

「はい……」

蘭はしょんぼりとした感じで返事した。

「うん、わかったならそれでいいよ……」

悠真はそう言って優しく頭を撫でた。彼の優しさに落ち込んでいた彼女の心は少し明るくなった。


***


数日後。

客もまばらになった昼下がり。マスターこと剛はタブレットでネットニュースを読んでいた。

「ついに捕まったか……」

彼が読んでいたのは、蘭の個人情報を盗むと書き込んだ犯人が捕まったニュースだった。犯人は悠真と同じ18歳の無職の若者だった。どうして犯人が特定できたのかというと、ウィルスとシリウスが戦っている最中に、剛がクラちゃんを使って、メールボックスの受信箱の送信先のデータを採取して、解析してその結果を警察に送ったのだ。ニュースによると、犯人はウィルスを作ったのは俺じゃないと言っているらしく、警察は彼にウィルスを授けた男を追っているという。

「……」

剛はため息をつきながらタブレットをテーブルに置くと、ふと後ろを見た。彼の視線の先では悠真がイヤフォンで何かを聞いていた。なんだと思い、近づいてみると、彼はスマホでranの動画を見ていた。

「ふふっ……」

剛は思わず吹き出してしまった。

「まさか好きになったのかな……?あの子に……」

彼はそう思いながらその背中を見守った。


***


「なに……?お前の作ったウィルスが退治されただと……? 」

薄暗がりの中、低いくぐもった声が響いた。

「はい……クライアント曰く、アーマースーツを着たサイブレイバーという戦士にやられたそうです……」

そう言ったのは、チャックにウィルスを渡したトールだった。

「サイブレイバーか……野放しにしてはおけんな……我々<アスガルド>の活動のためには……」

声は悔しそうにそう言った。


(phase01. ヘルプ!サイブレイバー出動! fin)

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