01−11 戦い終わって日が暮れて……


さっきまでウィルスが立っていた所には灰のようなデータのくずが積もっていた。勝利の余韻もつかの間、シリウスはそれの中で何かが蠢いているのに気づいた。

「なんだ……? 」

そうおそるおそる近付くと、くずの中からカニのような生き物が顔を出した。

「これは……! 」

これが何であるかわかったシリウスはくずの中からカニを救出した。


***


カニは細い足でデータ塵を払いながら一回転した。

「こいつはこのパソコンを管理するVAI(ヴァーチャル・アニマル・

インターフェース)……さっきのウィルスの正体だ」

「ウィルスの正体って……どういう事? 」

蘭の質問に対し、シリウスはこう答えた。

「今回の敵はボットウィルスだ……こいつにかかったパソコンは送り込んだ奴の思うままになっちまうんだ……今回の場合はこいつについてデータベースから情報を盗みだそうとしたんだ」

「……」

「なかなか厄介なウィルスなんだけど、その分倒すのは簡単だったよ……なにせしかしないからな……」

しかしないって? 」

そう言ったのは麻里だ。

「こいつはロボットみたいにプログラムされた指令にしか従わない。それを逆手に取ったのさ」

「へえ……」

「ボットウィルスは最低限の非常事態に備えて組まれてるんだ……だからこいつがーこれを作成したクラッカーがー考えもしない事を仕掛けたんだ……それがさっきの行動だ」

「じゃあ、さっき仲直りしようって握手しようとしたのって……」

「あえてした事なの……? 」

「そうだ……やったら案の定効いたよ」

二人はシリウスの策士ぶりに舌を巻いた。


***


「さて……」

テクニックの説明を終えたシリウスは、改めてカニ型VAIに向き直った。その手には小さなデータの塊が握られていた。

「これ、大事なデータなんだろ? 」

それを見たVAIは、シリウスからデータを受け取ると2年生のエリアに向かい、円筒データベースの中にそれを戻した。

「これで一件落着っと……さて戻ろうか」

彼がそう言うと、マスターはハルにダイヴ解除を指示した。

「了解。これよりダイヴ解除するのです」

ハルがそう言ってコンソールを操作すると、シリウスはすうっとモニターの中から消えた。


***


カプセルの扉が開き、悠真がHMDを取りながら出て来たのは、ダイヴ解除から数秒経たないうちだった。

「ふう……」

彼はため息をつきながら脱衣所へと向かった。

「悠真、おつかれさん」

マスターが彼の背中に向かってそう言うと、悠真はにっこり笑った。


(続く)

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