01−09 その名はシリウス


物語を続ける前に、先程出てきたCBIについて書いておこう。

CBIー

サイバー・ブレイン・インターフェースは、サイバースペース上に再現された人工頭脳と生身の脳をリンクさせ、そこの中でも現実世界と同じように自由に動ける夢の技術だ。約5年前に登場した当初、知名度は今一つだったが、これに当時新進気鋭のベンチャー企業だったサイブレイン社がシステム保持やメンテナンス向けとしての画期的な技術として利用したのをきっかけにサイバーセキュリティ業界に浸透していった。このフィールドの中で視覚的なオブジェクトとして顕現したサーバーやシステムを、現実世界の積み木や木材よろしく扱えるという、いわゆる誰でもできる手軽さと、システムエンジニア達の負担が減るという利便性がうけ、現在ではほとんどの企業がセキュリティやメンテナンスとしてCBIを利用している。


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話を元に戻そう。赤い光とサイレンに包まれた聖ローザ学園の生徒データベースの中でもぞもぞと何かが蠢いていた。それは円筒状に伸びているデータ達の間を縫うように進んだ後、あるデータの前で立ち止まった。それは円筒をゆっくりと登り、その中腹で止まった。すると、節足もどきは細い足で円筒の表面を引っ掻いて穴を開けた。

「……」

節足は足をぐっと伸ばし、小さいオブジェクトを取り出した。


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チャックはHMD越しにほくそ笑んだ。まさかこんな簡単にあの子の個人情報が抜き出せるなんて。あいつに感謝だな、と。あいつに感謝だな、と。あの日、黒パーカー男ー彼はトールと名乗ったーがチャックに渡したのはウィルスが入ったUSBだった。

「これをメールに添付して送れば、データベースに入り込める……後はプログラム通りに動いてくれる……」

さらにトールは、偽装用のメールアドレスも作ってくれた。至れり尽くせりだ。


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節足動物型ウィルスは、個人情報を持ってそそくさと帰ろうとした。その瞬間、どこからか声がした。

「そこまでだ」

チャックはなんだと思い、画面を見た。そこに立っていたのは、黒い全身スーツを着た若い男だった。

「システム管理者か……? 」

そう思って男の顔を見た彼はハッとした。なぜなら男のその顔はこの前蘭と話していた男そっくりだったからだ。

「……」

危険を察知したウィルスは、その体から自分の小さな分身を出した。小さな節足動物達は青年に群れで襲いかかった。彼は飛び上がってそれを避けた後、左腕をあげながらこう言った。

「今度は俺が相手だ……!」

すると、上げた左腕にしているブレスレットのようなものが光り、彼を中心に円筒状のフィールドを形成した。

「スクリプター、セットアップ! 」

そう言ってブレスレットのスイッチを押すと、閃光が辺りを包み込み、フィールドの表面に<now loading>の文字とプログレスバーが現れた。それが進むごとに青年の体に次々とアーマーが着せられていった。

「……」

チャックがあんぐりとしている間にセットアップは終了した。眩しい光の先に立っていたものを見た彼は腰を抜かした。そこに立っていたのは、銀色に輝く騎士の鎧に似たアーマーをまとった戦士だった。光の中で彼はこう名乗った。

「サイバー世界を照らす、正義の光 !サイブレイバー シリウス! 」


(続く)



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