残された身にもなって

 誰もいないオフィス。プレゼン資料にミスを見つけた僕は、必死に修正していた。あれだけチームで頑張ったのだ。ここで頓挫させるわけには――。

「先輩、一緒にやりましょう」

 後輩ちゃんに声をかけられ、体を震わす。

「帰ったんじゃ?」

「帰るフリをして残業する先輩は、あとでお説教です。だいたい同棲してるんだから、嘘ついてもバレますよ。何がちょっとヤボ用ですか。浮気を心配した私がバカみたい」

「え――」

「頼られず残された身になって欲しいです。結構、寂しんですからね」

「ごめん」

 そのタイミングで、メンバーが戻ってきて目を丸くする。

 

「やりますか! でもその後で同棲云々に関しては追求ですからね!」





________________

第79回 Twitter300字SS

テーマ「残る」で参加

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る