彼女と会う時はいつも雨.7
「あった!」
少年は叫び声をあげて、玲からもらった箱を取り出した。封がしてあるものの、容易く開く作りになっている。
だが、少年の手はなかなか動かなかった。
「何をしている。早く開けるんだ」
「わかっているんだけど、なんだか玲さんに見られてる気がして」
少年が泣きそうな顔でそう言うのを聞いて、頷いてからKは言った。
「おい、紳士ってのはどういうものだってのが、ウチの担任の口癖だ」
「いきなり何さ!」
目を潤ませる少年に、Kはさらにきく。
「いいから答えるんだ。紳士とは、何だ?」
「紳士とは、立ち止まる足についた手を引いて、革新と光を見せる英雄である」
そうだな、その通りだ、とKは笑った。
「お前は紳士だ。
意地悪く笑うKを睨みつけながら少年は叫んだ。
「くそ!そういうことか!くっそおおおおおおおお!僕は!玲さんが!!好きなんだッ!!」
自分に言い聞かせるように言い訳しながら、少年は箱を開いた。
「よくやった。やればできるじゃないか。流石は紳士」
中には、紙が一枚入っていた。取り出して、少年が読み上げる。
「えっと、『出会いのきっかけを、君はまだ覚えているかい?』……図書館の、あの本にヒントがあるってことでいいのかな」
「それ以外にきっかけの心当たりは?」
Kが促して、少年はしばらく腕を組んで考えるが。
「思い当たらない。早速行ってみよう」
「そうだな、光をもとめるべきだ。だろう?」
Kはあえて少し声を大きくして言った。玲の声は箱を見つけたときから聞こえなくなっていたが、何をしていたかは知っているんだろう。今は、革新と光の前に足がすくんでいても、きっと玲も前に踏み出すはずだ。
「K。ありがとう。君のおかげで僕は玲さんとまた会えそうだ」
「そのセリフは、いよいよ見つかったって時に、言うんだな」
まだ、会うのは早いと考えているだろう。どうやらそういう人物だと、Kは感じ取っていた。
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