星を見る人たち.5

出てきた言葉から、どうやら寧子とミオのどちらの世界でも、世間が持つ魔術師や魔法使いへの印象は同じだと分かった。

「異世界から飛ばされてきたあなたに言うのは多少気の毒かと思うんだけど、あんたみたいなのはここじゃ超危険人物なの。生きてるだけで死罪ね。悪いことは言わないから、諦めて裁かれるかそこの変なルービックキューブでも使うかして帰ってもらえないかしら?」

寧子としては精一杯の譲歩をしたつもりだった。明らかにミオの魔力は規格外だ。寧子の能力命令に表面上従って見せているだけで、何か不穏なものを隠しているという直感がある。そのような人型の何かは、この世のためにならないので排除しなければならない。それが、ルールなのだ。

能力は発動させながら、できる限り怒気を和らげて提案したのに、ミオは意地悪く笑った。まだ、持ってきた妙なルービックキューブはテーブルの上である。

「うそつき。あなた、いかにも根暗でぼっちな魔術師で腹立たしいけど私と同じくらいの強さだもん。他人に命令する能力だけ切り取れば、私以上。そんな人が死罪になってないんだから、私も死罪にならない方法があるはず」

寧子の表情が変わった。演技の怒りいつもの仮面が外れようとしている。

「‪あんたとは状況も何もかも違う。いきなり私の元へやって来たと思ったら言うに事欠いて死罪の大罪人だと?冗談もいい加減にしろ」‬‬‬

ミオは表情を変えない。意地悪い笑みを浮かべたままである。

「何か間違ったかしら?根暗でぼっちで性格悪いですーってオーラをびんびん纏った奴には容赦するなって家訓なの。それにあなた、ネコって呼ばれてたわね。私とキャラが被るわ。どこかしら変えてくれない?」

「上等だ、その耳もぎ取ってくれる……!」

「やってみてよ。面白そうだ。あなたの怒りとプライド、このミオ=リッケルハイムが根こそぎへし折ってやる」

二人は静かににらみ合う。案外波長が合うのだろう。ミオが他人を煽ることは、あまりない。寧子が演技を解くのも――命の危険を招きかねないため――普通は見られない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る