星を見る人たち.4
呆然自失のまま硬直しているミオを置いて、すばるは奥に引っ込んでしまった。『リッケルハイム』という名前に聞き覚えがありそうな様子だった。もっとミオから聞きたいことがあるので、寧子はミオの向かいに座った。
数分後、紅茶でも淹れようかと席を立とうとしたところで、ようやくミオが叫び声をあげた。
「はいぃ!?朝から思ってたけどやっぱりここってとんでもないド田舎なんでしょ?そもそも住民全員が耳長で、しかも少数部族ばっかっていったい全体どういうことなの?銀河から違う場所に飛ばされたとかそういう話なの!?」
一体何の話だと思いながら、寧子が冷たく切り捨てる。
「少なくとも私は、変な言葉を話す面白猫人間に出会った覚えなんかないわね。
ポカンとした顔で、ミオの口が「ちきゅう」という形に動く。
「そんな星、私知らないわ」
座り込んで、ルービックキューブに手を伸ばそうとして、ミオはその手を戻して、指を組んだ。祈りのポーズのような組み方だが、どうやら精神統一のためのもののようだ。ふわふわとして色々な感情が滲んでいた魔力が、一気に落ち着いて、研ぎ澄まされていく。
(世界に轟く名家の出だというのは、本当みたいね)
乱れた魔力を整える一番の近道は、日頃の鍛錬の積み重ねだ。そして、高いプライドや戦いの経験が、鍛錬をより強く、より確かなものに変えていく。味方であれば、ミオはとても頼りになる人物だと、寧子は感じた。
「つまり私は不審者とか危険人物とかそういうカテゴリーの存在としてここに今いるわけね。私に背後から襲いかかってとっ捕まえたお姉さんとか、あなたみたいな人がいるってことから考えると、この星全体の悪者とか、悪霊・悪魔・化け物って辺りが無難な言い方かしら。それで朝から色んな人に追いかけられたりなんだりする訳か。はぁー…」
ミオは深いため息をついた。星々の海が綺麗だと思うとか、付き合いきれないから帰るとか言っちゃったからバチが当たったかなぁという呟きは、寧子には聞き取れなかった。
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