スターゲイザー.14

「ねぇ、ミオ。あなた、運命って、信じる?」

縋るように抱き付きながら、マヒルはミオに訊いた。顔や声は笑っているが、目には鋭い光が灯っている。殴っている場合ではないと術を解きながら、ミオは答えた。

「よく分かりません。でも、そういう答えを出せるようにしようとして、私は今ここにいるんだと思います」

その言葉を聞いて、マヒルは頷いた。

「……うん、天球儀はちゃんと動いてる。

マヒルは大きく深い息を吐いて、一度ミオから離れて、そうして力いっぱいミオに抱き付いた。

「ありがとう、ミオ。あなたに会えて、あなたの力が借りられて、あなたのおかげで運命に打ち勝つことができて、私は本当に嬉しいっ」

マヒルの予想外の力強さに戸惑いながら、ミオは苦笑した。

「それは何よりです。それで、なんでこんなところで泣いてたんですか?」

色々聞きたいことはあったが、まずは涙の理由が知りたかった。

「星がいつもより静かだったのよ。間違いが出ないように天球儀を斬ったつもりだったけど、もしも私のせいで、って思ったら涙が止まらなくて」

「……リッケルハイムの糸術で、宇宙全ての生命が終わっていたかもしれないんですか?」

冷静になってみるとをしでかしていたのではないかと気がついて、ミオは声を震わせた。

「当たり前じゃない。その糸、どんなものでも壊すのよ?作った本人だって宇宙の半分くらい壊しちゃったんだから」

あの可能性は他人事だったから面白いんだけど、自分の身に降りかかると絶望よね、とマヒルは笑うが、ミオの顔は蒼白である。

「この糸術、使う時は余程の緊急事態か怒ってる時なんですけど、もしかして私も宇宙の半分消し飛ばしちゃったりします?」

マヒルはまばたきしてから、笑った。腹を抱えて、心底愉快そうに。ミオは気が気でない。

「大丈夫よ。あなたの魔力と性格やさしさじゃ誰に手伝ってもらってもそんな事態にはならないわ」

マヒルから、離れて、何歩か踊るように後ずさって、小さな溜息をついてから、マヒルは微笑んで。

「それでね、ミオ。星々の果てから、ここまで、どんな気持ちで見てた?」

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