スターゲイザー.3

ミオは15歳。白い斑のある茶髪、猫の耳を持った獣人けものびと。細い、ウェーブかかった長い髪を青いバラをあしらった髪飾りで上げて留めている。前髪にも、同じく青いバラの付いたヘアピンを二つつけており、黒檀のような目が意志の強さを感じさせる。160cmを少し超えるほどの身長を、軍指定の外套に埋もれさせている。今は真冬で、魔女の暮らす街は田舎なので、空調の効きがかなり悪い。列車から降りただけで身を刺すような冷たさを感じ、余計に歓迎されていないように思えて、再び大きなため息を吐く。ベルトを使って背負っている杖が揺れ、金具が軽い音を出す。一週間でも二週間でも魔女を連れてくるまで帰ってくるなと言われ、慌てて旅支度を一番大きな肩掛け鞄にありったけ詰め込んできたから、体積は普段のミオと比べて五割増し。この街は夏でも肌寒いくらいだと聞いていたから手持ちの武器短剣と装飾品は肩掛け鞄と反対側の鞄に全て詰め込んでしまっているせいもあり、心細さが指数関数的に増大していく。

オマケに――最も致命的で厄介なことに――ミオは、魔女がこの街のどこに住んでいるかを知らない。

「これからどうしよ……いくら隊長から命令されたからって言ってもここの軍施設は遠いし私みたいな小娘を助けてくれそうな気がしないし……」

立ち止まっていても仕方がないと駅を出て歩き出すが、アテはない。こうして杖を背負って揺らしておけば、同じ魔術の使い手が寄ってくるだろうと思ったが、駄目元の賭けだ。良くないアイツ等を引き付ける可能性もあるから、官憲に怒られる可能性もある。

「あの、これ、落としましたよ?」

後ろから声をかけられて、ミオは振り向いた。ミオよりも頭一つ分小さい耳長の少女だ。歳はミオと同じくらい。プラチナを思わせる、真っ直ぐな長髪が目を引く。手には、ミオの階級章があった。武器を入れた鞄の方に入れておいたが、落ちてしまったのだろう。受け取って、礼を言う。

「ありがとうございます」

深々と頭を下げたミオに、耳長の少女は微笑んで言った。

「気にしなくて良いですよ、ミオ=リッケルハイムさん。魔女探し、頑張ってくださいね」

ミオは弾かれたように後ずさり――ようがなかった。荷物が重すぎる。

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