昼間瞬く星の下で~スターゲイザー~

スターゲイザー.1

誰が言った話であったか。星を見れば、世界の全てが分かる。今まで築き上げられた無数のサイクルの中に、微かに生じるイレギュラー。そのイレギュラーさえもが、一定の法則に従って引き起こされていると、かつて誰かが気づいてしまった。生命の魂誰もがその中にいる限り、そのことを知ることなく星の巡りの環の外へは出られないと知りながら、「外」があると気がついてしまった「誰か」がいるのだ。それまでにも何度も宇宙は誕生し、そして滅びていったのだろう。


「宇宙の外」まで巻き込んで引き起こされるが知りたい。できれば、その繰り返しを変えてみたい。


「誰か」はそう考え、とある道具を作りだした。距離にも時間にも縛られない、「神の目」を利用した、最高の網膜を。宇宙全てを観測し、異常が発生してないかを判断するその機械天球儀に座り、ひたすらにイレギュラーを記録しては自身の住む惑星系との連関を調査し続けた。やがては――その瞬間は宇宙が一度滅び去った後であろうが――世界の全てを知り尽くすことができる。そうすれば、次の宇宙はきっと今よりも過ごしやすくなるだろう。それだけを支えに、ひたすら記録し続けた。

しかし、天球儀には訪れない寿命という限界が、「誰か」の身に近づいてきてしまった。予想外のタイムリミットに焦った「誰か」は賭けに出た。天球儀のコピーを作り、今までの調査記録と共に、宇宙全ての知的生命体が暮らす惑星へ送り込むという賭けだ。元から後継者も理解者もいない、孤独と静寂の中での作業だ。「誰か」の調査を続けるためにはそれしかなかった。誰も協力しなければそれまで。宇宙の全てを知ることのできぬまま、終わりが来て、今まで通り星が巡る。





星の巡りか、はたまたもっと別の、もっと深い外側にある何かが関係したのか。「誰か」の機械万象天球儀と、を手に入れ、理解する者が誕生してしまった。その者は天球儀に座り、命続く限りの調査を選んだ魔女――デイウォーカー怪物中の怪物である。彼女は手に入れる前から、星を見ることと夢を見ることを何よりも好んでいた。

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