ヒイラギ.18

支度を終えたフィリップは、女神によって神徒たちの集合場所に転送された。

「それでは今回のノイズデブリの特徴を整理します」

電脳空間であるので、女神の姿は女騎士の見た目だ。神徒たちは皆、一言もしゃべらずに真っ直ぐ女神を見つめている。

「まず、無数の青黒い触手を目にすることになるでしょうが、これは全て本体ではありません。従って無視しても構いませんが、背後から攻撃を受けるという報告もあります。可能な限り処理することを推奨します」

女神は淡々とした口調で注意点を列挙していく。聞きながらヒイラギの姿を探すが、見つからない。神徒たちに隠れて見つからないのかもしれないと思い、念入りに確認したがそもそも来ていないようだ。

「さて、本題の本体に関してですが、こちらは少女の姿をしています。ブロンドの、年若い少女の外見をしています。今まで説明した物たちをけしかけることもせず、ただ静かにこの下水道や都市区画を徘徊しているのみとなります。武器を所持しておらず、何かしらの攻撃をしてくることもありませんが、何名かの報告にあるように傷つけることができません。また、未知のプログラムを有している可能性が高いです」

「その、未知のプログラムについて詳細を知りたいのですが」

途中で、神徒の一人が口を挟んだ。微妙に焦点が定まっていないところを見ると、女神が操っているのかもしれない。

「まず、ノイズデブリ本体の全身から黒い液体のような物が広がります。ノイズデブリ本体の構成成分なのではないかと思われますが、私のセンサーでは感知できません。現段階ではノイズデブリ本体に接近した結果として、液体出現が確認されています。発生する距離はおおよそ本体にこちらから手が触れられるほど。全身に纏うケースもあります。そして、この液体の性質ですが、全てのデータをリセットしてしまうようです。報告のあったケースでは、神徒の子機使い魔に攻撃させようとしたところ、その子機のデータの全てが初期化されてしまいました。銃弾や刃物、鈍器で傷を与えられないのも同様に、『そこに存在する』というデータを消滅させられているのではないかと考えられます」

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