ヒイラギ.17

「さて、と。私からもう一個お知らせ。フィリップに休んでもらっている内に、色んな人に協力してもらったり私が全力で頑張ったりしたおかげで、無事ノイズデブリを発見できました。後はさっさとみんなで戦って、最後のトドメをフィリップとヒイラギ君で刺しちゃえば終わりだよっ」

えへん、と自慢げに胸を張る女神。

「ノイズデブリの痕跡見つけたーって夜間に活動してもらってる神徒に言って、ヒイラギ君のいるとことヒイラギ君には一切手を出さないってことを約束させて、ヒイラギ君も説得して。やっぱり人海戦術って強いねー。どこにいるか見当がついてから二時間ちょっとで済んじゃった」

フィリップの日課分の仕事を自分で片付けてしまいながら、女神は嬉しそうに語る。

「……どうかした?」

呆然と立ち尽くすフィリップを見て、女神が不思議そうに首を傾げる。昨日の今日であまりにも変わり過ぎている。

「ヒイラギの監視は?」

女神は首を横に振る。

「不必要ってほどじゃないけど、何かヒイラギ君を見た瞬間からずっとフィリップの脳波がおかしかったっていうのが理由としては結構大きかったから気にしなくても大丈夫」

腕輪をそっと撫でながら、フィリップは更に訊く。

「他の神徒たちから不満の声は、上がってないんですか?」

「そんな声を上げるような悪い神徒は、あんまりいないよ?いてもまぁ大体個別に対処して色々頑張ればどうにかなる人ばっかりだし」

まだ質問ある?と女神が訊き返してくるので、フィリップは意を決して最後の質問をした。

「この腕輪はなんですか?」

「さぁ?こっそり義体で近づいて脅かしてやろ~って思ってのしかかったら見えて、明らかに私が渡したものでも元からこの部屋にあったものでもないからムカッと来たけど、そんだけだよ。あ、でも」

何か思いついたように手を合わせてから、女神は言った。

「もしかしたら、私が生まれるよりもずっと前からある魔法の道具的な物かもしれない。私の検知できる範囲を超えた何かが出てるみた、い……?」

最後の方は自信なさげに、消え入るようになりながらだったが、女神の勘はよく当たる。

「魔法の道具……」

改めて呟きながら、まじまじとフィリップは腕輪を見た。

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