第25話

お別れを、したくちゃいけなくなった。ごめんね、連れて行ってあげられない。

君と離れるなんて、考えていなかった。ずっと一緒にいると思っていた。

次はもっと大きな家で、女の子が2人いるお宅。きっと君は楽しく暮らせるよね。可愛がってもらえるよね。


涼しい時期には、布団に潜り込んで来た。私にくっついて丸くなる君が愛おしかった。

夏もよく隣で寝ていたね。私の足がひんやりしていたのか、肉球をペタッと押し付けて来たこともあった。

子猫の頃は力一杯噛みついていたのに、いつの間にか甘噛みが上手になった。

家の中に虫がいると、飛びかかって遊んでいた。

足には絶対に噛みつかないのに、毛布の下からちょっとだけ出た親指は、足だと分からずに噛んでしまう。

ピアノから扉の上に飛び乗った時はびっくりした。

家の屋根に登って、大冒険したこともあったね。

寂しがり屋ですぐに私を呼ぶ君。「うにゃ〜〜」と長く鳴きすぎて、よくアクビになっていた。どうした?と聞くとすり寄って来たね。尻尾を絡ませるのは大好きな証拠なんでしょ?ありがとう。

たくさん吐いていた時期はすごく心配だった。吐かなくなってよかったね。

私が寝込んだ時、君は変わらずご飯を要求した。でも私が泣いている時は、膝の上でずっとずっと撫でさせてくれたね。

どこにいてもよく寝ていた。ベランダで日向ぼっこをしながら寝ていたね。でも呼ぶと必ず耳がこっちを向く。

お風呂が嫌いで暴れた。爪切りも嫌で、我慢できなくて飛んで逃げた。


私は君を忘れないよ。たくさんたくさん癒してくれた君を忘れないよ。

君のヒゲが左右1本ずつだけ黒いのも、耳の後ろの毛が柔らかいのも、撫でられてる君のかすかなゴロゴロも忘れない。手を舐めるザラザラした感触も。

でも君は忘れていい。新しいお母さんとお父さんと女の子たちと、楽しく暮らしてくれればそれでいい。


ありがとう。

私たちと一緒にいてくれてありがとう。

楽しい時間をありがとう。

また、会えるといいね。

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