第20話 大人の人間と、最凶の敵!?
「あなたは何者なんですか?」
「どうしてここにいらっしゃるんですか?」
「人間の大人は妖精界に居られないんじゃなかったけか?」
雄也、優斗、和馬がそれぞれ疑問を口にする。
「初対面の相手に何者は失礼じゃないかな? ……と、言いたいところだけど、確かにその疑問が生じるのも仕方ない事かもしれないね」
そう院長が笑顔で答える。
「人間の大人なんてあたいも初めて見たぜ」
「皆様、この方は大丈夫です。確か
疑問を口にしたファイリーだったが、レイアはこの人が誰なのか知っているようで補足をしてくれた。
「レイアさんと私は初対面ですよね、初めまして、当時うちのライティとレフティが世話になったようで。レイアさんお察しの通り、私も
そういうと、院長のエイトは色々と教えてくれた。
まずはお互いそれぞれ自己紹介をする。そして、これまでの経緯を説明した。
……
……
「なるほど、色々あったんですね。他の国も大変な事になっていたとは知りませんでした。そうですね、疑問はたくさんあるかと思います。まず、皆さんご存じの通り、人間の大人は妖精界に居られない。妖精界と人間界は夢と現実のようなものです。夢の中にずっと居ると、人間界には戻れなくなるのですよ」
「え? 戻れなくなる?」
エイトの言葉に雄也が思わず反応する。
「ええ、妖精界と人間界とでは、そもそも時間軸が違うんです。そうですね、人間界にあるお伽噺、〝浦島太郎〟のようなものですね。竜宮城から帰って来た浦島太郎が時間軸の違う場所に長く居たせいで、現実に戻ると玉手箱により、おじいさんになってしまう……。僕の場合は望んで妖精界に居る事を選んだ数少ない人間です。そもそも
浦島太郎になるのはごめんだ……そう思いつつ喉を鳴らす雄也。
「僕が強く望んだ事……そして、
「
「そうですか、君も夢妖精と。ただ君はここにずっと残りたいとは思ってないでしょう。ここは異世界であり、現実は人間界……そう思っているはずです……」
「そ、そうかもしれないです」
「僕はここに残らないといけない理由があった……それだけです」
理由については教えてくれなかったが、エイトは過去に色々あってここに居るようだった。
それから、エイトは、
二十年前……
ちなみにライティは
ドラゴンは巨大で凄まじい負の
先ほどの噴水広場の戦闘で見た、負の妖気力をガードする
が、この戦闘において何百、何千というエルフ、妖精人が犠牲となった。ブリンクの両親や、
〝闇竜の惨劇〟としてこの事件は
「なんか、ドラゴン倒したって事は、普通に考えるとさ、国を救った英雄になるんじゃないのか? どうして国を出る事になるんだ?」
「貴族というやつはなんでも責任押し付けたり面倒くさいのさ」
和馬の疑問にファイリーが答える。貴族とは面倒くさい生き物らしい。
「私も当時仕えていた王宮のご主人やお嬢様をこの事件で亡くしまして、途方に暮れていたところを慰霊祭でたまたま
レイアもこの事件に巻き込まれた一人だったという訳だ。
「あ、あのー空気読めない発言かもですが……いいですか?」
「優斗君? なんだい?」
優斗が何かに気づいたらしく、エイトに質問をする。
「いや……さっき二十年前っておっしゃってたので……エイトさん……それからレイアさんもだけど、そんなに歳に見えなかったので……おいくつなのかなと」
「そうだね……人間の歳でいうと……僕は三十八歳になるのかな?」
「ええええ!? 二十代後半に見えますよ?」
「いや、妖精界はさっきも言った通り、時間軸が違うから、あまり歳を取らないんだよ。人間の女性がもしこちらにずっと居られるならずっと歳取らないんだから泣いて喜ぶだろうね」
そうエイトさんが教えてくれた……。あれ? という事は、レイアさんは……。自然とレイアに雄也達の視線が集まる。
「女性に年齢を聞くのは人間界では失礼と聞いた事がありますが?」
レイアは最近優斗に冷たい。
「まぁ、いいじゃないレイア……確か……百二十歳くらいだっけ?」
代わりに答えてくれたのはリンク……だったのだが……。
「ひゃ、ひゃくにじゅっさいいいいーーーー!?」
これにはさすがに人間三人が驚いた。
「え? どうしてそんなに驚くんだ?
ファイリーが当たり前だぜという顔で答えてくれた。
「な、なんだってーーーー」
「嗚呼、僕も初めて
エイトが笑って三人の反応を見ている……。
「妖精の寿命は五百年とも千年とも言われています。妖気力が強ければ強いほど長生き出来る。人間でいう成人が二十歳だとすると、妖精は百歳でようやく一人前という事になりますね」
リンクやファイリー、ブリンクは女子高生くらい。ブリンクはなぜかセーラーっぽい服を着ているので余計そう見える。パンジーは中学生……レイアが二十代くらいと勝手に想像していた訳だが、衝撃の出来事だった。
「年齢のトークで盛り上がりたいところだけど、そろそろ本題に戻ろうか……。君たち……その今回の
エイトが話を戻す。
「あ、そうです。さっき村を襲った妖魔がナイトメアって言ってました……」
「そうか……ナイトメアか……」
その名を聞いて考え込むエイト……。
「ナイトメア……聞いた事はない名前だが……エイト、何か考えるところがあるのか?」
そう聞いたのはクレイだ。そういえば当時の隊長同士って言ってたもんね。
「いや……そうではないんだが……やはり雄也君達をこのままナイトメアの居城に行かせる訳にはいかないよ」
「いやいや、エイトさんよ、あたいとリンクが居るんだぜ? そんな元凶一瞬で倒せるってもんだぜ」
「そうですよー、これだけ心強い仲間がついてるんですー余裕のシャキーンです!」
「僕も戦うよーだから大丈夫だよ」
「そうにゃーうちも戦うにゃー」
各々が返事をしたのだがエイトが続ける。
「いや……君達の実力は分かっているつもりさ。さっきここまで来る経緯も聞いたしね。だが、君達の
「
雄也が青い鳥に思わず反応する。
「嗚呼、雄也君達に補足すると、
「な! 全滅だと! おい、プレミアはどうなったんだ」
クレイが興奮気味にエイトに詰め寄る。
「嗚呼、
「ば、馬鹿な! あいつに剣を教えたのは俺だが、二十年経った今、恐らくあいつの剣技は俺を超えているかもしれないというのに……一体どうして……」
「そうだね、剣技だけならそうかもしれない。だけど、クレイ、あの
「な!?」
クレイが絶句する! エイトは黙って目を閉じ、首を振った。そのプレミアというエルフもやられてしまったようだ……。
「
族長アラーダも驚いて会話に入る。
「いや……今回の相手は『グランドグール』だったようです。グールの負の妖気力が増大し、何百、何千というグールが一個体として進化した存在……何百年に一度現れるかと言われる最凶最悪のあの妖魔ですよ」
アラーダの疑問に答えるエイト。
「聞いた事があります。妖魔の中でも最凶クラスと言われるグランドグール……強大な負の妖気力に打ち勝つ攻撃をしなければ、身体は自己再生し、
「そうですね、レイアさん。しかし、もっと厄介なのは、グランドグールという最凶の妖魔を、ナイトメアという元凶が裏で操っているという事は……ナイトメアはもっと強いという事になります」
――――!?
その通りだった。今までに戦った事のないレベルの最凶の敵。
―― 一筋縄ではいかない。
そう思う雄也達だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます