第16話 夢妖精の溜息
話は少し遡る――――
『……ー、も・も・しーーーーえるーーナティー居まーーー?』
身につけているお揃いの
目の前に居る外敵が放つ
『あ―、―ないのかな?……い、ル……ィ・、妖―ザザ―優斗―ザザザ――たよー?』
「ああーーごめんねー愛しの優斗ー実はちょっと今立てこんでるのよーそれと、しばらく使役しようとしてもそっち行けないからーまたね、一旦切るわね」
そういうと女妖精――ルナティは一旦通信を切った。それとほぼ同時に、目の前の外敵が黒い触手のようなものを伸ばして攻撃してくる。鞭で触手を払いつつ、本体へ攻撃を加える。
「もうーー! 優斗からのせっかくのラブコールなのに! どうしてくれるの! 愛の一閃!
目の前の黒い霧が固まったような化物が共鳴音のような悲鳴とも取れるカナキリ声をあげ、その瞬間消滅する。本体には剣などの武器が通らないような相手に見えたが、ルナティの一撃は精神体そのものにダメージを与える攻撃だったようだ。
「はぁー、だいたい、私は戦闘向けの妖精じゃないのよね。せっかく優斗が
溜息をつきながらルナティは呟く。夢見の回廊の道なき道を足場から足場へふわっ、ふわっと飛び移っていく。時折回廊に出現するナイトウィスプを撃退しつつ、彼女はどこかへ向かっていた。
――よくぞ無事に戻りましたね、ルナティ。
「はいはい戻りましたよ。もう疲れたわよー。あんなことになるんだったら最初から言って欲しかったわよー。夢見の
――予知……ではないのですよ、ある程度予測出来るだけであって、どうなるかはルナティやあの子達の行動次第……それだけ
「まぁ、今回の事でそれはわかったわ。だいたい夢と夢の空間である夢見の回廊にまで干渉して、結界を作るなんて普通不可能よ。本来人間界の子供達と妖精界の夢を見る生物に関しては、
――渡り放題なのは貴方の能力が強いからでしょうルナティ。そもそも並の夢妖精であれば一日に一往復、しかも強い
「だから私だった……って訳よね、……
そう、雄也達があの
――この任務は人間との適合者であり、
「まぁ、昔のよしみだし、
そういうと、ルナティは何かを
――これは……どうやって食す物ですか?
「ああ、その蓋を開けて付属の匙で食べるみたいよ。人間界の食べ物って本当美味しいわよねー。
――どれどれ……パクっ……んんっんんっ!? なんですか、この口の中で溶けていく甘さと芳醇な香りは! わかりました! この味を再現出来るように街のシェフへは依頼しておきましょう!
「ありがとう! そうこなくっちゃー
――んんっーー美味ですねー、溶けますねぇ、一緒にほっぺたも持っていかれ――――
「(じーーーー)」
――ゴホン、あ、失礼しました。ルナティ貴女が予想している通り、人間、特に子供の強い
十六夜は続ける。
――貴女達が
「それはまずいわね。まぁ、きっと優斗達は戻って来るでしょうから、そこは心配いらないんでしょうけど……で、私は何をすればいいわけ?」
――話が早くて助かります。貴女は
「えーーどうして優斗な訳? 優斗の事は独り占めしたいのよー」
――そうしたいのなら結構ですが、恐らくその子と優斗殿が契約しなければ、貴女の
「はぁーそれは困るわー。分かったわー行って来まーーす」
――それからルナティ、くれぐれも気をつけて……恐らく貴女はあの子達とは合流出来ないでしょうから。
「な! なに! それ? また閉じ込められるのはまっぴら御免よ?」
――閉じ込められるかはわかりませんが、異変が
そういうと
――夢見の巫女特製の水晶玉です。これである程度の結界を超えて、
「わかったわ、まぁ、任せておきなさい。また美味しいスイーツ持って帰って来るから!」
そういうと、ルナティは軽くウインクする。
――それは楽しみにしてい……からかうのはやめてください!
「……え? じゃあ、要らない?」
――……お願いします。
ルナティが夢見の回廊へと渡ってすぐ、異変は起きた。夢見の回廊が不安定になったのだ。最近夢渡りが地域によって上手く機能しない事が多かった。
夢渡りをする時は、一旦回廊に入り、対象の〝夢〟を探す。眠っている時の方が当然強く反応があるが、
夢見の回廊を渡り、〝
回廊が安定している時は宙に浮かんだ道や階段、透明の道などが浮かんでいるものであるのだが、回廊が不安定なため、飛んで渡るしかなかった。重力の概念が地上と違うため、まるで月面を行くかのようにふわふわっと飛び移っていったのだった。
そして、冒頭へと戻るのだが――――
「――愛の一閃!
再び金切り声をあげるナイトウィスプ。
「もう! 何匹目よ、このナイトウィスプー。あの
何匹目か分からないナイトウィスプを倒したルナティは再び溜息をつく。右手には愛用の鞭を持っていたが、左手にはなぜか途中で拾ったメロンパンを持っていた。
「これはしまっておきましょう、さてそろそろ目的地のはずだけど……」
腰に巻いたバンドに付属のポーチらしき袋にメロンパンをしまいつつ、ルナティが目を閉じ念じ始める……。
「あの子がいつものように
……
……
……
『……もう食べられにゃいにゃあああ~~むにゃむにゃ……』
――!?
「居た! よし、まだ
そういうとルナティは念じ始めるのであった――――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます