女大公、伊達男を襲撃す


 一月も初めの始め。 

 正月早々、一人、また一人と芝居小屋を抜け出し、そして最後に自分たちの芝居小屋に火をかけ、一人残らず、ハーマポスタールから逃亡したかのように見えた、奇術団コンチャイテラ。

 彼らの一部は今、ハーマポスタールの下町の一角、以前、ザイオンの第三皇子トリスタンが、桔梗星団派の面々と会っていた場所に、身を潜めていた。

 そこは、ハウヤ帝国帝都ハーマポスタールのテルミナル・エステに近い、場末の下町。下町地区でも一番端に位置し、金のない流れ者や、表通りを通れないような外国人たちが隠れるように住んでいる場所だった。

 もっとも、そこはそんなごみごみした町の中でも、増築に増築を重ね、すでに入口がどこなのかも分からぬほどに入り組んだ、だが、部屋数だけはとんでもなく多そうな民家だった。通りに面した部分が繋がった、長屋作りの建物ではあるが、裏の方では幾重にも積み重なった階層が、金属や木造の、ちょっと重たい男なら踏み抜きそうな階段で繋げられている。

 裏は淀んだ水の流れる細い運河に面しており、表側は入り組んだ裏通りに面していた。その裏通りは馬車も通れそうもないほどに細い通りだが、それだけに大勢に踏み込まれる危険は少ないと思われた。

 こんな場末の建物の中に、こんな部屋があるとは信じられない、天地創造の神とされるアストロナータが世界を創造している場面を、精緻な彫刻で彫りつけた木の扉の奥。

 「紺色の部屋」。

 彼らの党首である、チェマリ。元はこのハーマポスタールの大公だったアルウィンの髪の色に合わせたような、壁紙からカーテン、敷かれた敷物までが紺色のグラデーションを見せる、豪奢に飾り立てられた部屋である。

 そこには今、奇術団コンチャイテラの魔女スネーフリンガが、息子の魔術師アルットゥとたった二人で、肘木や木組みが金色に塗られた紺色の天鵞絨ビロードのソファにかけていた。言うまでもない事だが、彼女の正体は、三年前に先帝サウルによって、家ごと存在を抹消された、アルトゥール・スライゴ侯爵の夫人、ニエベスだ。

「オドザヤはなかなか、トリスタン王子の仕掛けに、我を忘れてはまり込んではくれないようだから、先にカイエン様の方を片付けようと思ったんだけど、うまくいったようね」

 アルットゥを、自分の座った長椅子の横に、いくつもいくつもクッションを重ねた上へ、人形を座らせるように座らせると、ニエベスは、これまた青っぽい金色に塗られたテーブルの上の、蒸留酒の瓶へ手を伸ばした。昼間から飲もうというつもりらしい。

「お前たち二人の、最も大切な者を奪う、私はそう決めていたわ。だから、あのカイエン様の……愛人だの夫だの、ちょっと悲しんだ後には、すぐに取り替えのきく奴らじゃなくて。……今、死なれたら一番困るだろう男を狙ってやったのよ!」

 それは、以前彼女がこの同じ部屋で、宣言するようにして言った、

(オドザヤ、そしてカイエン! 私はお前達の一番大切な者を奪う。オドザヤ、大切な人さえいないかわいそうなお前にはまず、心全部を捧げるような、大切な者を探してあげる。その者に心奪われてから、すべてを喪うがいいわ!)

 という言葉の半分を、実現してやった、という勝利の言葉のようであった。

「ちょうどよかったのよ。何度か事件現場で、カイエンとあの軍団長が一緒にいるところを見たわ。そしたらびっくりするじゃないの、あの軍団長イリヤがカイエン様を見ていた、あの目! いやだもう、あはははは」

 ニエベスがこぼれ出てきてしまった笑いで、続きが言えなくなるって言葉を切ると、代わりに横のソファに、クッションいくつも置いて寄りかかっている、アルットゥが続ける。

「あはは。確かに笑っちゃうような眺めだったね、あの、大公軍団の恐怖の伊達男の目は! 関心のないフリを一生懸命になってしている、もうそれが仮面の様になっちゃった、哀れな男の目だったね。あの伊達男の仮面の中で、目だけがいまだに正直者なんだ。だが、おかしなことに、カイエンも、その周りの奴らも、みーんなあの伊達男の仮面に騙されちゃっていたんだね」

「ちょっと疑って見れば、遠くから見ててもわかるのに、ぜーんぜん、気が付いてないんだもの、笑っちゃったわ。あははははっ。ああ、可笑しい」

 アルットゥが茶化せば、ニエベスもまた、けたたましい笑い声をたてる。

 まあ、彼らにはイリヤのそれを見る前から、もう知っていた事実があった。それは、桔梗星団派の中で、党首のチェマリから聞いていたのだ。

 だから、見ればわかるとは言っても、イリヤの厳重に隠された想いは、そこらの通行人などに分かることはなかっただろう。

 アルウィンの娘であるということだけで、カイエンを特別視するよう仕向けられ、その周りを囲む人間を、粗探しでもするように見ている、彼らのような人間だからこそ、気が付いたことでもあったのだろうから。

「まあ、軍団長の、涙ぐましい努力で隠蔽された、隠された片思いは置いておくとしても、それでも今、カイエン様が失ったら一番痛いのは、あの男だった。それだけは間違いない。あの男がいなくなったら、大公軍団はあちこちで行き違いが起きて、自ら崩壊しかねない。あの軍団長がいてこそ成り立つように、あの男自らが、この六年で作り直しちまったんだからね」

「馬っ鹿よねえ、あいつ。まあ、それだけ自分がいないとカイエンが困るように、大公軍団を改造してまで、恋の奴隷根性で付きまとい続けようとしてたんだわ。だから、百面相シエン・マスカラスが『顔が手に入らない、どうしても近くに行かないと出来ない』って言うから、ついでに片付けておいで、ってけしかけたんだけど」

 ニエベスは、蒸留酒の入った重たそうな瓶を取り上げると、中身を、同じテーブルの上に伏せてあった、二つのロマノグラスの杯に注ぎいれる。なんと、彼女はまだ二、三歳の幼児である、アルットゥにも酒を勧めようと言うのだろうか。

「まあ、百面相シエン・マスカラスの腕じゃ、あの男は片付けられないからぁ。だから、親切に、近くに毒塗りの十字弓クロスボウを持たせた奴を配備して置いてったのに……手順が狂ったわね」

 ニエベスは片方の杯をアルットウの前に置くと、自分の分から、ぐいっと一口飲んだ。かないける口らしい。

十字弓クロスボウ持たせて張り込ませるなんて、どこででも出来やしないから、わざわざ、新開港記念劇場のこけら落としの日に、港の倉庫なんかから狙える、あの場所を選んでおびき出したのに!」

 ここまで話して、ニエベスはどん、とグラスをテーブルに叩きつけた。 

「まさか! カイエンが飛び込んでくるなんて!」

 さすがに口元は上品にぬぐいながら、ニエベスがそう言うと、アルットゥも面白そうな声になった。さすがに、幼児の手ではテーブルの杯までは手が届かない。

「そうそう、まさか、カイエン様までもが出てくるとは思わなかったよねえ。馬車で乗り付けて、一直線にあいつのところへ歩いて行ったんで、暴露ばれたかと思ったな。でも、暴露ばれちゃいなかったね。カイエン様は百面相シエン・マスカラスには気が付かなかったもの」

 二人は、どこからか一緒に隠れて見ていたのだろう。

 その、治安維持部隊長の双子の、マリオとヘススが同じ場所にいる時のように、代わり番こに話す、会話とも言えない会話は、あの日の現場を知っているものにしか話せない、臨場感に満ちていた。

「まあ、おかげで百面相シエン・マスカラス一人で用が足りたけどね。十字弓クロスボウの射手も使わずに済んだし、天磊テンライを呼び出すまでもなかった。あの条件で、最初にカイエンを狙えば、さすがの軍団長も間に合わない。カイエンに一顧だにされないってのに、ずうっと思いを隠し続けている、あの哀れな男なら……と思って、百面相シエン・マスカラスに合図したら、思った通り!」

「カイエン様を庇って、腹を深々と抉られてぇ! ああ! あの後のカイエンの取り乱しようったらなかったわね! 大声出しちゃって! 腰抜かしちゃってぇ」

 ニエベスはさも面白そうに、アルットゥの上へ身をかがめ、彼を抱きしめながら、くすくすと笑う。

「そりゃそうさ。目の前で失われようとして初めて、あの男の価値が分かったんだろうからね! そりゃあ、気が付いた時にはもう、殺されて、失っていました、ってのが心底効いたんだろうね」

「あの様子じゃ、カイエンも、あの男を憎からず思っていたのね。なのに、全然、気が付いてなかったなんて! オドザヤといい、姉妹揃ってなんて鈍感なのかしら!」 

 その時、両側にアストロナータ神の天地創造の図が彫られた扉が、外から遠慮がちに叩かれなかったら、ニエベスとアルットゥはなおも、観客のいない、二人の掛け合い漫才の様な会話を続けていただろう。

「なあに? だあれ」

 扉を叩く音に、ニエベスがアルットゥを抱きかかえながら答えると、扉はすっと向こうから開かれた。

 入ってきたのは、陰気な、馬 子昂シゴウの顔だった。

 いつも、平面的な顔には表情がないが、今日はなんとなく、つり上がった目と頰のあたりに不満そうな様子が見て取れた。

百面相シエン・マスカラスがあちこち遠回りして、足取りを消してからやっと帰ってきました。……それと同時に、悪い知らせですよ。……大公軍団軍団長は、まだ生きているそうです。治安維持部隊長の双子の方も、失敗したらしい」

 これをきくと、ニエベスの白い、細く整えられた眉毛がきっと上がった。

「何ですって! どういうこと? 腹を深々と刺されていたじゃないの。あの出血を見たでしょう。あれで助かるはずがないじゃない!」

 子昂は表情を変えない。彼にとってはもう、この情報は裏も取れている確実なものなのだ。

「それが、どういうわけか、助かったんだそうで。探りに出した奴らからも、百面相シエン・マスカラスからも、治安維持部隊隊長のあの双子の様子と署員の話から、まだ死んでないのは確からしいと言っている。その後の大公宮や街中の署の動きからも、葬式だのなんだのの動きはない。それどころか、軍団長が戻るまで、双子の隊長を盛り立てて頑張ろう、みたいな空気になっているらしいです」

 子昂は、もうイリヤの生還は決定事項として動いているようだ。

「あの男、確かエミリオ・ザラや、大公宮の執事と同郷……プエブロ・デ・ロス・フィエロスの出身だったはずだ。まさかと思うが……」

 ここで、やや呆然とした顔ながらも、言葉を挟んだのはアルットゥだった。

「獣人の血でも引いてたというの?」

 ニエベスがギリギリと歯嚙みでもしそうな様子で聞くと、側からアルットゥが静かに言った。

「ああ。なるほど。あの男も、チェマリに選ばれた男だったね。チェマリはカイエン様を見張る者として、スライゴ侯爵である私を選ばず、あの下賎の男を『盾』の頭に選んだんだよ。グスマンに押し切られて! それじゃあ、あの男はエミリオ・ザラの『蟲の結社』の方にも、足を突っ込んでいたということか! 薄汚い平民のくせに、私を押しのけてチェマリに取り入りやがって。それなのに、チェマリが目の前から消えた途端、色に目が眩んで、女大公にさっさと鞍替えした恥知らずめ!」

 アルットゥの言葉は、嫉妬と憤激に塗れている。彼はかわいらしい顔を真っ赤にして、ソファの上から飛び降りて、地団駄を踏んだ。

 桔梗星団派の「盾」の頭には、最初はアルトゥール・スライゴが目されていたのかもしれなかった。それを、グスマンに紹介されたイリヤを見たチェマリ、当時の大公アルウィンが変更してしまった、と言うことなのだろう。

 つまり、三年前の事件で、先帝サウルにその存在から抹消されることとなった、アルトゥールの悲劇は、そこに端を発している、と彼は信じているのだろう。それでも、アルウィンの側から離れようとしない様子なのは、今や、元の体を失い、息子である幼児の体に宿っているからなのか……まずは、アルットゥの中身が本当に父親のアルトゥールなのか、ということからして疑問なのではあったが。

「まあまあ、アルトゥール様、お怒りはお鎮めください。奇術団の方も、百面相シエン・マスカラスの仕事が終わって、上手く畳むことができました。……あの、仮面の部屋が燃え残っていると、ちょっと厄介ですが、まあ、残っていてもそれで百面相シエン・マスカラスの盗み取った顔全員を抑えられるわけでもありませんからね。あれだけの数に見張りを付けることも出来ないでしょう。そっくりに化けられて、利用されるかもしれないと知ってもね」

 子昂が、言葉だけは取り成すように言うと、アルットゥは子供とは思えない目で、「誤魔化されないぞ」とでも言うように、子昂ののっぺりした顔をぎっと睨みあげた。

「それは、そうでしょうけど」

 ニエベスの方は、アルットゥの怒りを見て、自分の方の憤りは治ってきたらしい。

「……もういいわ。あーあ、喜んで損しちゃったわ。大公軍団の連中は、命冥加な奴らねえ。……それでも、もうすぐ、トリスタン王子のお父様がこちらに到着されるのでしょう? もうちょっと成果を上げられないと……あちらザイオンへの申し訳が立たないわよ」

 ニエベスが建設的かつ、前向きな発言をすると、子昂のどうでも良さそうな表情だった顔が、少しだけ変わった。

「ええ、その通りです。シリル様の件なら、もうそろそろですよ。ですから、ハーマポスタール市内の頭でっかちの不満分子達と、早く知遇を得たいと思っているのですが」

「ああ。あの、リベラとかいう金貸しのおぼっちゃんのやってる、日向湯みたいなぬるぬるの政治結社ね。……あんな、俄か学問で、税金の貴族優遇がどうとか、民衆の血税が上流階級を富ませている、とか。どっかの国の革命話から知識だけ引っ張ってきて、仲間内で盛んに議論しているだけの、実際は平民だけれども、裕福な恵まれた知識階級になれたから、口だけは回っている人たち! あんなのが本当に役に立つの?」

 ニエベスの言葉は真実を捉えていたらしく、螺旋帝国人の子昂は、思わず、ぱちぱちと拍手した。もっとも、あまり変わらない平坦な顔つきでのことだから、いささか気味が悪かった。

「ディエゴ・リベラですか? あれは無理にでも、役に『立て』ますとも。モリーナ侯爵や、モンドラゴン子爵があの通りでおとなしくなってしまいましたからね。細工師ギルドの件では、あまり上手くいきませんでしたが、まあ、あれはついでで、もう要らなくなったカスティージョ伯爵を排除するための、実験のようなものでした」

 子昂の言う通りなら、細工師ギルドがカスティージョの館を襲った事件の黒幕は、まさしく彼らであったと言うことになる。

「リベラのグループを手始めに、不満分子を絡め取って行けば、それなりの数になって行きますよ。ああいう頭でっかちの連中は、自分は頭がいいと思っていますから、平穏な生活に刺激を与える血生臭さを『感じさせる』だけの小難しい話には、すぐに乗ってきます」

「……いつか、自分たちが痛い目を見て、血を流すことになるなんて、考えもしないのね」

「馬鹿な奴らだ。だが、確かに、利用価値はあるな」

 ニエベスと、アルットゥは、もうイリヤや双子を消し損ねた方のことは、忘れることにしたらしい。思えば、彼らも子昂などから見れば、「生ぬるい」のかもしれなかった。

「まあ、大公軍団も、しばらく動きが鈍くはなるでしょう。その間に、せいぜい、あのザイオンの王子殿下にご活躍いただかなければ」

 それまで、紺色の部屋の扉の前から動かずに話し続けていた、馬 子昂は、そう言うと、思い出したように付け足したのだった。

「ああ、そうでした。トリスタン王子のお父様、シリル様ですが、あのオリュンポス劇場はもう、大公軍団に張られておりますので、直接、こちらへおいでいただくことになりそうです」

 と。







 その日も、シーヴはイリヤの元を見舞いに来ていた。

 エミリオ・ザラが見舞いに訪れた、翌日である。

 カイエンはもう、床をはらって、まあまあ普通に生活しているそうだが、奥医師は彼女の体調を左右する、体内の蟲の回復がわからない、といまだに公務に戻るのを押しとどめているらしい。

「ああ、そうなの。じゃ、殿下の方はもういいや。あのさ、マリオが襲われた件はどうなったの? 俺を刺した、あの百面相シエン・マスカラスってのが、ヘススに化けさせた仲間の手引きで逃げ出したとかいう方だけど」

 イリヤがマリオの襲われた件を聞いたのは、やっと昨日の夕刻のことだった。さすがに周囲もイリヤの怪我の具合を推し量ってくれたようだが、大公軍団軍団長のイリヤとしては、数日遅れでの情報はもどかしい限りだった。

 イリヤが、この六年間に作り上げてきた、大公軍団の仕組みというのは、先帝サウルの行った、中央集権型政治の応用型で、軍団長であるイリヤの目が組織の末端まで届くよう、上下の伝達の速度を上げる人材配置をし、そして、現場の責任者が決められた規則にのっとって、ある程度の自律的な判断ができるゆとりを持たせたものだった。

 それはグスマンまでの時代の、独裁的な軍団長の元、現場は直属の上司の意向を優先し、事件の解決よりも組織の内部での処理を優先するものとは、一線を画したものだった。

 これは、一人、イリヤに先見の明があったわけではない。イリヤという人間は、完璧主義でなんでも自分で確かめないと納得できない、損な性分だっただけだ。だから、彼の仕事はいつまでたっても終わらず、目の下にクマを作って働き続けることになったのだが、それはある意味、自業自得だった。

 だが、いくらなんでも自分で確認したくとも、それではこの広いハーマポスタール全域の治安を預かることなど出来はしない。そこで、イリヤが自分の性分をなだめるために、苦肉の策で考案したのが、もう、それまでに形は出来上がっていた、法に照らした対応を規則化した服務規程の徹底だった。その上に、現場から上がってくる情報が早く伝わるように、人員を整理し、並べ替えたのだ。

 だから、こうした事件の様相は、それが重要な事件であると現場が、中間管理職が判断すればするほどに、爆速でイリヤの元まで上がってくるのが普通になっていたのだ。

 そんなイリヤの性格は、シーヴにはもう六年の付き合いで、かなり正確に理解されていた。だが、相手は怪我人である。

 シーヴは、あえてイリヤのいらいらをいなすように、間をとった。

「奇術団コンチャイテラは、ヘスス隊長が到着した時には、もうかなり燃え広がっていて、それでも根性で近隣への延焼なしで消し止めたそうです。だけど、中身はほとんど燃え落ちてて、団員もとっくに逃げ出して、もぬけの殻だったそうですよ」

 シーヴは、ちらりとイリヤの寝台の横に置かれている、彼が食べた後らしい昼食の盆を見た。まだ、飲み物とスープくらいで固形物は無理のようだが、皿の中身は完食されている。

「そうなの」

 やや不満そうだが、イリヤ自身も自分の腹の傷のことは理解しているから、おとなしくうなずいた。

「でもね。ヘススさんが現場に、あのカマラさんを連れてって、描かせて来たスケッチ……燃え残った部屋……気味の悪い仮面の部屋の絵は不気味だったですよ。多分、部屋の壁全部を、全部違う顔の仮面が並べられて、覆ってたんじゃないかって、ヘススさんが」

 シーヴは本当は、このことはまだ黙っておきたかったのだが、マリオとヘススから言われていたので、最低限のことは話すことにしたらしい。

「あの百面相シエン・マスカラスってのですけど、どうも、この帝都の名士達の顔を……そのう、コレクションしてたみたいなんです。仮面にして」

 これを聞くと、すぐにイリヤの鉄色の目が、ぎらっと光った。

「隊員に化けおおせて、俺を刺しやがったあの百面相シエン・マスカラスってのは、まさか、その部屋一面の仮面全部に化けられるってんじゃないでしょうね?」

 イリヤが聞くと、シーヴはもうしょうがなく、こう答えるしかなかった。

「マリオさんが襲われた時、ヘススさんに化けてたのはもちろん、百面相シエン・マスカラスじゃなかったですから、『他人を化けさせる技術』も、ってことになるでしょう、って」

 シーヴはマリオとヘススに聞いたことを、しっかりと全部、イリヤに公開した。

「くっそ。俺ちゃん、こんなとこで寝てる場合じゃないじゃん。あー、苛立つぅ! ねえ、お前この頃、急に背が伸びたじゃん。力、あるでしょ。俺を担いで、現場に連れてってよ! 別に体が動かなくっても、頭は働くもん」

 無茶なことを言い出すイリヤを、八つばかりも年下のシーヴは、まあまあ、となだめた。

「そ、れ、は、無理です。お医者さんに厳命されてます。アキノさんにも、マリオさん達にも。だいたい、生きてるのが不思議なんですよ、イリヤさん。普通なら、今頃、もう棺に花に囲まれて寝かされて、墓地に埋葬、ってところなんですから」

 そこまで話して、ふっと、シーヴは自分が入って来た、表の広い廊下に面した扉とは反対側にある、やや小さい扉の方へ目を動かした。

「あれ?」

 シーヴがそう言うまでもなく、イリヤにも感じ取れていた。

 奥の扉、それは裏の廊下に繋がる扉だったが、の向こうに誰かの気配がする。と、言うか、かすかに足音のようなものが聞こえたのだ。

 だが、気配は部屋の中に聞き耳を立てているらしく、それきり動く様子はない。 

 そこで、ふっとシーヴは胡桃色の透き通った印象的な目を、まっすぐにイリヤの方へ向けた。そして、いきなり話題を変えて来た。

「そうそう。俺、ここ数日でやっと気が付いたことあるんですよね。……イリヤさんのことで」

「ええっ、なあに、それ?」

 イリヤの声は、ちょっと上ずっていたかもしれない。

「もう、ずいぶん経ちますけど、ソーサ先生が、初めてイリヤさんと会ったとき、変なこと言ったじゃないですか。覚えてます? あれ、俺はずうっと気になっていたんですよ。最初に殿下が、イリヤさんと先生は似てる、って言って、それを先生と会ったときすぐに、イリヤさんが『似てないじゃないですか』って絡み始めて……」

「あ、あれは……その」

 イリヤもすぐに、その時のことは思い出した。そして、ゾワっと、背中が寒くなった。

 あれは、教授の寺子屋の教え子の、ディエゴ・リベラが、あの連続男娼殺人事件の容疑者として、この大公宮の表の取調室へ連れてこられた時のことだった。

 マテオ・ソーサ。

 あの憎ったらしいおっさんには、一見で自分の裏の裏まで見抜かれ、看破されたのだった。 

「ええっと、イリヤさんと自分はよく似てるって、確か、お母さんとの確執がどうとか、言っておられましたよね。それでも、イリヤさんが目の下にクマ作って働いているのは、女性である殿下の下にいるからだ、って話でした。あのソーサ先生が、その場の出まかせでなんか言うはずないし、でも意味が今ひとつ、わかならないよなあ、って思ってたんです」

(……ついでに言えば、完璧主義で、他人に仕事を任せられない。なんでも先走って用意してないと不安な小心者。……それに多分、母親と確執があったから女性不信だ。どうです、似ているでしょう?)

 イリヤは思った。

 ああ、あの時の教授マテオ・ソーサのセリフは、今でも、そらで思い出せる。初めて会った男に、あそこまで心の底を覗かれた衝撃。顔色は変えなかったと思うが、冴えない中年のおっさん先生の人間洞察力に、ぞうっとしたことは今でもよく覚えている。

(それから女性のことは……君がこの大公殿下の下でそんな風に真面目に働いていることからわかるでしょう。どうです。自覚があるんじゃないですかね)

 そこまで思い出して、イリヤは慌てた。

「あの、あれはぁ、女性不信の話だったでしょ? シーヴ君」

(もうそれ以上、俺について気が付かなくっていいから!)

 イリヤの、実は必死な言葉に、シーヴはちょっとだけ考えているよ、と言うジェスチャーを見せた。実際にはもう、確信を得ているのに違いないのに。

「お母さんで始まっちゃってた女性不信なんですよね。でも、殿下の下では身を粉にして真面目に働くイリヤさん。俺、あの時の先生の話の謎かけが分かったら、六年前、イリヤさんが、最初に殿下に挨拶に来た日のことも、腑に落ちちゃったんですよねぇ」

 その先を、シーヴは独り言の中に入れてしまったので、イリヤには全部聞くことはできなかった。だが、「弱い子いじめと思ったけど」とか、「素直じゃないんだなあ」などという部分は、しっかりと聞こえた。

「じゃあ、俺はもう今日はこれで失礼します。イリヤさん、まだろくにご飯も食べられてないんだから、あんまり興奮して大騒ぎしないでね」

 そう言うと、もうシーヴは椅子から腰を浮かせている。

「ちょっ。ちょっと、シーヴ君。君、殿下の護衛騎士でしょ? 何でここで帰ろうとするの。おかしいでしょ。ねえ、あの向こうの扉の方に……え? ちょっと、あっ、逃げるの早い!」

 イリヤは、当然、裏廊下と繋がった扉の向こうの気配に気が付いているはずのシーヴが、さっさと寝台の横の椅子から立ち上がり、振り向きもせずに表の廊下に続く扉の方……こちらには次の間があって、広い廊下と繋がっている、の方へ歩いていくのを止めようとした。だが、シーヴは大股に部屋を横切り、あっという間に、

「じゃあね、イリヤさん。また明日来るから」

 と、言って、出て行ってしまった。

 イリヤは、表廊下を遠ざかっていくシーヴの足音を聞きながら、今や、そこから怪物でも現れそうな、おどろおどろしい気配を宿した、裏廊下へと続く扉へと、横目で視線を動かした。

 寝台の上で体を動かしたら、シーヴが出て行ったことがばれる。

 頭の中で考えていたのは、そんな埒もない考えで、もちろん、そんな考えを裏扉の向こうの人物は察してなどくれなかった。


 コンコン。

 それでも、来意を告げる音が、奥の廊下に面した扉から聞こえて来たのは、扉の向こうの人間が、こうした礼儀ごとやマナーにはうるさい人種だと言うことの証左だろう。

 イリヤは、昨日までの能天気な自分を、心の底から呪った。

 ああ、裏廊下。

 そう言えば、この部屋は、リリの部屋の隣の、歴代大公の子女の部屋だったというこの部屋には、二つの入口があったのだ。

 扉を叩く音は、イリヤが返事をするまでやめないぞ、という意思の強さで続いている。

「はあぃっ! 何ですかあ。誰ですかぁ」

 とうとう、イリヤは苛立たしげな音の連続に耐えきれず、そう答えてしまっていた。

 がちゃり。

 待ってました、とばかりに、裏扉が外側から開かれた。なるほど、鍵さえかかっていなかったのだ。

 開いた扉の向こうに、イリヤが見たのは、想像していた通りの姿だった。

(アキノやサグラチカ、それにヴァイロンに見張られているカイエンが、一人でこのイリヤの病室までやって来ることなど、できるはずがない)

 昨日まで、そう決めつけていた。

 だが。

 この現実の非情さはどうだ。

「……元気そうだな」

 低い、女としてはまことに低くて、ドスの効いた声を聞くまでもなく。

 扉の向こうから、左手に室内用の杖を突きながら入って来たのは、紛れもなく、この街の大公、カイエンの姿だった。

 カイエンは、シーヴの言っていた通り、まだ寝たり起きたりの様子で、寝巻きの上に冬物の、分厚い絹と毛織もののガウンを羽織った姿だった。

 もちろん化粧気もなく、長い紫がかった黒い髪も、結うこともなく豊かに背中に垂らしている。妙齢の女性が、これまた微妙な年頃の男の部屋を訪れる時の服装としては、普通なら好ましい姿ではない。だが、夜這いの類だとしたら、ぴったりだと言えたかもしれなかった。

「入ってもいいか」

 イリヤは、カイエンのそのセリフに、大声で噛みつきたい気持ちを抑えた。

「……もう、入ってるじゃん」

 イリヤはカイエンと目を合わさないように、あさっての方向を見ながらそう呟いたが、カイエンは、そこはお姫様で、ずかずかと部屋に入ってくる。

「私がここを使っていた時は、気が付かなかったが、ここの色合いは、何ともかわいらしいな」

 部屋の中の壁紙や、床に敷かれた絨毯の色味を確かめるように入って来たカイエンの言葉を聞いて、イリヤもここが子供時代にカイエンが暮らしていた部屋であることに思いが至った。  

 だが、そんな葛藤の中でもカイエンはどんどんイリヤの方へ、歩いてくる。それも、どう見ても一人だ。アキノもサグラチカもくっついて来てはいない。

 やがて、カイエンはイリヤの身をあずけている寝台の、すぐそばまでやって来てしまった。

 イリヤの寝かされている寝台は、その昔、カイエンが使っていたものだが、一人用というにはあまりにも広い、普通なら夫婦で寝ても余るような大きさのものだ。かなり長身のイリヤが寝ていても、狭苦しさとは無縁だ。

 さっきまでシーヴが座っていた椅子とは反対側。

 その寝台の縁まで、カイエンが歩いて来た時だった。イリヤは、目を逸らし続ける徒労を感じつつも、まだ意固地にカイエンと目を合わせないまま、やや大きな声を出してしまっていた。自分でも可笑しいが、いい歳になっても、狼狽すればこんなものだ。

「ちょっ。殿下、ダメよ。そこの線からこっちには入ってこないで」

 イリヤはそう言うと、必死の動作で、自分の寝ている寝台のへりを指差した。それはもちろん、カイエンの立っている側だった。

「どうしてだ。なんでそんなに怖がる? 怖がるなら、女の私の方だろうに」

 カイエンの方は、応答も落ち着いたものだ。攻撃側というのは、こんなものだろう。

「いいの! いいから、そこの線から中には入らないで」

 イリヤがなおもそう言うと、カイエンは寝台の縁で止まった。

「線って……。ここか? 分かった。じゃあ、ここで話そう」

 カイエンはそう言ってくれたが、そっち側には椅子も何もなかったので、彼女は自然なそぶりで寝台の端に腰掛けてしまった。足の不自由なカイエンでなかったら、立ったまま話をしただろうが、彼女的にはそれは考えの外であったようだ。

 だが、寝台に腰掛けたので、イリヤと直接、向き合うことにならずに済んだのは、イリヤにとって幸運だった。

「もう、起きて食事も始めた、と聞いたから、来てみたんだが。今、シーヴが来ていただろう?」

 そんなこと知ってて、扉の向こうで潜んでたくせに! イリヤはそう言いたかったが、ぐっと耐えた。

「えーえー。来てくれてましたぁ。でも、帰っちゃったけどぉ。それで、殿下は今日はまた、どうなさいましたぁ?」

 背中を支える枕にこのまま埋まって消えてしまいたい、と思いながらイリヤが聞くと、カイエンは静かに答えた。

「夢の中で話していたことを、覚えているか? 私はちゃんと覚えているのだが」

 その言い様は、私が覚えているんだから、当然お前は覚えているだろうな、という確認だ。

「え、ええ。覚えて、いるようですね。あはは。それで、今日ここへ殿下おん自らおいでになったということはぁ?」

 ヤケクソ気味にそう聞いたイリヤへ、カイエンはクソ真面目にうなずいた。

「お前が夢の中で言っていた、ヴァイロンとエルネストのことは、もう分かった。……と言うか、余計なお世話だ。あっちはあっちで私が考える」

 あれから、たった数日。

 なのに、カイエンの中では夢の中でイリヤがごねまくった内容が、きれいに整理されているようだった。

「そ、そうですかー」

 イリヤは、寝台の真正面を見たまま、こう答えるしかない。

「今、私が聞きたいのは、彼らのことではなく、お前のことだ」

「へー」

 イリヤは生唾を飲み込んだ。これはもう、恐らくきっと、百パーセント、ごまかす術はない。それだけは分かっていた。

「夢の中でも聞いたが、もう一度聞く。……お前はどうして、私を庇った。死ぬかもしれないと、お前なら、分かっていたはずだ」

 カイエンは、目をそらしたままのイリヤの横顔から目を離さず、続け様に攻撃した。

「そして、どうして私にあんな話をした? お前には関係のない、ヴァイロンやエルネストの気持ちを、どうして彼らの代わりに代弁しようとしたのだ? お前はそんなお人好しじゃないだろう。そんな親切な男でもないはずだ」

 無言。

「いやもう、そっちの理由は分かっている。お前は、もっと大切なことを誤魔化そうとしたんだ。それが、最初の質問だ。答えろ、イリヤ」

 だが、イリヤは強情に答えず、沈黙を守った。

「意識が戻る前に、いや、戻ってからも、お前はヴァイロンやエルネストに締め上げられたか? そんなことは聞いてない。ならば、夢の中でお前が言ったことは、巧妙に真実を、隠して置かなければならないもっと大切なことから、私の目をそらそうとしたんだ。……なあ、そうだろ?」

 カイエンにそこまで言われれば、もう、イリヤに逃げ場はなかった。

 彼は、やっとの事で、ぎりぎり軋みそうな首を曲げて、カイエンの方を見た。

「殿下さあ、もういいじゃん。俺に言わせなくてもいいでしょ? もう分かっちゃってるんだもん」

 だが、ここまで言っても、カイエンは許してくれなかった。

「だめだ。私は疑り深い性分でな。お前が気にしてたように、ヴァイロンの時も、エルネストの時も、言葉が足りなくて、ややこしいことになった。今度ばかりは……はっきり、お前の口から聞いておきたい」

 ヒィ。

 イリヤは、今度こそもうだめだ、もう、自分の鎧っていた架空の城の城壁はすべて壊れた、粉砕された、と認めなければならなかった。仕事のことではいくらでも自分をごまかせた。でも、今ここでここまで追い込まれては、もう、ごまかすすべも思い付かなかった。 

 イリヤは、しばらくの間、黙っていた。

 それはもう、攻撃側のカイエンが不安になるほどの間。


「俺が殿下を、好きでも嫌いでもいいじゃん。そんなの殿下に関係ないもん。それは俺の勝手でしょ。好きでも嫌いでも、殿下に今まで迷惑かけてないし。これからだって、あんなことがなけりゃそのまま、お墓まで持って行ったはずのことだもん。でね、どっちかってえと、殿下には、俺を好きにならないで欲しいんだよねぇ!」


 そして、やっと喉から出て来たのは、そんな言葉の羅列でしかなかった。

 だが、もう捨て鉢に言ったその言葉で、寝台の隅に座っているカイエンの背中がびくりと震えたのを見た途端、イリヤは自分の防戦の時間が終わったことを悟って歓喜した。

 カイエンもまた、確実な勝利を期して、ここにやって来たわけではないと気が付いてしまったから。

「あはは。やーだ、殿下ったら、急に怖くなっちゃったぁ?」

 イリヤは、かわいそうなカイエンの気持ちを代弁してやって、さっさとこの場から逃げていく理由を与えようとしていたのかもしれない。

 それは、続いて彼の唇から出て来た言葉の、粗野な、大人ぶった響きにも現れていただろう。

「大丈夫よぉ、殿下。いま俺、腹に力が入らないし、勃ちゃしないから安心しなよぉ」

 そんな言葉を言ってしまってから、うわ、俺って下品、皇子様エルネストを嗤えないわ、と思ったが、もう遅かった。

 三十年も生きていれば、もう、何度も失敗して、一度口から出てしまった言葉はもう、元には戻せない、と言うことは知り尽くしている。

 なのに俺は。

 この正念場でやってしまった。

 イリヤは、自分の目元と額に手をやって、今さっき自分が吐き散らかした、軽率な言葉の収拾がつかないものかと焦っていた。

 だから。

 その時。

 カイエンが、隅っこに座っていた寝台の上に膝を乗り上げ、イリヤの方へ向かって来たとき、イリヤの心臓は止まりそうになった。


「私の心を弄ぶな」


 イリヤは、見た。

 向き直り、彼の方へにじり寄って来た、カイエンの顔は、そっくりだった。

 ひっ、とイリヤの喉が彼の心とは関係なく、恐怖に鳴ってしまったように。

 そっくりだったのだ。

 その顔は、あの日、イリヤが大公宮の裏庭で、あの怪物アルウィンに、魔法をかけられた時の怪物アルウィンと同じ顔に見えた。

 その顔は、最初は同じに見えた。 

 だが、すぐにそれはもっと、もっと恐ろしい魔物に変わっていったのだ。


「私は、お前に、確かな私を、真実の私を見せていたはずだ。……なのに、ことここに至って、私の心を掻き乱そうとするとはな。これはもう、許せない」


 イリヤは、枕の上へ押し倒された自分の上にのし掛かって来る、あの怪物アルウィンよりも恐ろしい魔物カイエンの表情を、指先さえ動かせないまま、だが、目をつぶることも出来ずに、見つめているしかなかった。

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