何でもありなのが野球

「あー、疲れた……」


 こりゃ筋肉痛になるな……。


 ベンチに座って休憩する。なんとか当たるようにはなった。ボテボテのゴロだが。相手がばりばりの野球人となると俺は戦力にはならなそうだ。


「ふいー、打った打った」


 他のメンバーも一仕事を終えたようにバッターボックスから出てきた。そろそろ腹の空いてくる時間帯だ。


「ご飯行こー!」

「ご飯ご飯!」

「そうだな」


 バッティングセンターを出た道路沿い。ぽつぽつと飲食店が並んでいるのが見える。


「焼肉がいい!」

「あそこは昼からやってなさそうだぞ」

「そうなの? サボり?」

「採算が取れないとかだろ」


 焼肉屋ならメインは夜だろうし。たまにランチもやってることろはあるか。


「うどんでいいんじゃないか?」


 よく見るチェーン店の看板だ。感動するほど美味しいとはならないが、裏切られることもない。薄汚れた看板の見たことない店にはできるだけ行かない性分。


「仕方ないなー」


 と言う割には変なダンスを踊ってご機嫌だ。


「エルフ野さんと乃真路はどう?」

「いいと思います」

「私も構わないわよ」


 なられっつらごーだ。


 少し歩いて店の中に入る。お昼時だからかそれなりに盛況な様子。座れなくはないな。


 お盆を置いてカレーうどんを頼む。カレーと言う文字があると選ばざるを得ない。後はかしわ天といなりをチョイスして会計を済ます。


 五人が座れる席を確保、それから人数分の水を用意して準備完了。


「うわあ……。お前らそれ、取りすぎだって……」

「へっへーん。うどんなら天ぷらっしょ!」

「天ぷらマシマシ!」


 これ確実に千円オーバーなやつ。エルフ野さんもいなりとおにぎりが五個で中々のボリューム。乃真路はうどんだけなのがらしいな。


「それじゃ、いただきます」


 はねないようにゆっくりと。うん、やはり美味しい。値段相応の味。


「それにしても、エルフ野さんの運動神経が良かったとは思ってなかったな」

「私たちエルフは生まれた頃から外を走り回ってますので体力にも自信があるんですよ?」


 生まれた頃からってのは言いすぎだと思うが。エルフ野さんは野生児だったのか。


「乃真路は何の影響なんだ?」

「魔女の嗜みね」

「何かとそれだな……」


 魔女同士の野球があるのならぜひとも見てみたいけどな。魔球がまさしく魔球になるんだろう。消える魔球に燃える魔球とか。めっちゃ面白そう。


「ふふん、那穂もすげーんだぜ?」

「那緒も那緒もー!」

「まあ見てたからそれは分かるんだけどさ」


 確か野球部もあったよな。そっちには入らないのか。


「宇宙で野球は大人気だからなー」

「……宇宙?」

「そう! 宇宙野球!」

「宇宙、野球……」


 何そのいかつそうな野球。


「重力十倍野球とかめっちゃ熱いよ?」

「十倍って……」


 野球どうこうの前に死にそうだな。ボールとか絶対飛ばんだろ。


「無重力野球も面白いよね」


 宇宙なら無重力なんだろうけど……。ボール取り逃したら全部ホームランだな。というかボールを打ったら反対に吹っ飛んでいくからベースも踏みにいけない。


「とてもじゃないが野球として成り立ちそうになさそうだ」

「兄ちゃんは分かってないなー」

「野球ってのはさ、何でもありなんだよ?」


 宇宙では野球の概念がおかしなことになっているらしい。






「ふいー、食った食った」


 いい感じにちょっと眠い……。


「さあ、バッティングセンターに戻ろー」

「まだやるのか?」

「あたぼーよ! 時間は待っちゃくれねーんだぜ?」

「そうか……」


 あんだけぼこすか打てれば楽しいわな。しかし、体力もだが金銭的にもダメージがあるのが痛いところ。


 バッティングセンターに戻って早速やるか、と思ったのだが双子は野球ゾーンを通り過ぎていった。


「どこ行くんだ?」

「ふっふっふ、野球に必要なのはバットでボールを打つだけじゃあないんだぜ?」

「それはそうだが」


 打って投げるのが野球だ。ピッチャーをしないにしても守備で必要になるのがやっかいだな。


「って、何を持ってんだ?」

「ラケットでござる!」

「……」


 確かにどこからどう見てもテニスのラケットだ。


「レンタルできるよ?」

「何でテニス……?」

「野球だけじゃつまんないっしょ?」

「そういう問題なのか?」

「そういう問題なのだ!」


 まあいいか。俺もラケットを借りる。さすがにこれで野球のボールを打つわけではないようで、階段を下りて奥へ行った場所にテニスのコートがあるようだ。その他にもサッカーにバスケか。サッカーはパネルに当てるゲームみたいになってて面白そうだな。


 テニスコートは半分しかないようで、ネット向こうには野球同様にテニスボールが飛び出すマシンが設置されている。


 これが野球の練習になるのかは疑問だが、こっちなら当てることは難しくなさそうだ。硬貨を入れて準備完了。


 マシンがうなり声を上げてボールを吐き出した。


「そら!」


 パコーン、と気持ちのいい音と共にホームラン級の打球が飛んでいった。


 ……これはいい。まともなテニスとは言えないだろうけど、テニスをやるわけじゃないんだしな。


「ふっ!」


 またもやホームラン。あれだな、テニスボールとラケットを使って野球をすれば活躍できそうだ。


 マシンが大人しくなるまで打ち続けてホームランを量産する。俺の才能はここにあったのか。


「兄ちゃんさあ、スポーツに向いてないのかもね」

「いやいや、ホームラン王と呼んでもいいんだぞ?」

「テニスだと威張れないよ?」


 宇宙野球なんてもんがあるのならテニス野球があってもいいだろう。

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