ひゃっほー! 茶会だ茶会だ!

「えー、本日もお集まりいただき皆様には大変感謝を申し上げたいと思います!」

「恐悦至極に存じます!」

「はいはい」


 今日も元気な双子だな。朝起きてから夜寝るまでずっとこの調子なのが窺える。むしろ寝てる時までうるさいか寝てないから変なテンションなのか。


「それにしても、相変わらずそっくりだな」

「一日で見た目が変わるわけないっしょー」

「そうだそうだー」


 それはそうなんだが。双子を見たのも小学生以来だしな。高校まで同じってのは仲がいいんだろう。


「仕方ない、兄ちゃんには那緒たちの見分け方を教えてやろうじゃあないか」


 随分上からだな。パイプ椅子の上に立ち上がっちゃって。


「スカートの下にスパッツなのが那緒だと中にいる那穂が説明しよう!」

「スカートの下にパンティなのが那穂だと中にいる那緒が説明しよう!」

「いや、髪の毛の長さで言ってくれるのが一番分かりやすいと思うんだが」

「もー、確認したいなら覗いても、い、い、よ?」

「覗くかよ」


 こっちに尻を向けてふりふりするな。乃真路もスカートをめくるな。


「ほら、今日はすることがあるんだろ」

「そうそう、頼むよ兄ちゃん」


 俺に期待されても困るんだが。


「色々と用意してきましたよ」


 エルフ野さんは両手をぐっと握ってやる気な様子。


「まずはこれです!」


 そして鞄から取り出したのは二つの青いヘルメット。その頭頂部分にはハンドルがくっ付いている。


 これが昨日言ってた例の……。


「これかぶるんだね。パイ〇ダーオーン!」

「シャキーン!」


 躊躇なくかぶるな。


「へへん、どうだい?」

「似合ってるとは言いがたい」

「こんなにぷりちーなのに?」


 ぷりちーって何だよ……。正直にダサいと思う。これをかぶって平気なのはエルフ野さんぐらいだろ。


「それをかぶって、まずはハンドルを回すそうです」


 エルフ野さんがペラ一枚の紙を呼んでいる。説明書か? まあハンドルを回すぐらいしかすることはなさそうだよな。


「兄ちゃん頼んだ!」

「まじ姉頼んだ!」


 はいはい。


「回すぞ」

「ばっちこーい」


 ハンドルを握ってぐるぐるする。引っかかりはなく、力を入れなくても簡単に回ってくれるようだ。


「どれぐらい回せばいいんだ?」

「十秒ほどででいいそうです」


 じゃあもういいか。本当に馬鹿みたいな絵面だな。これがハンドルじゃなくてランプなら愛嬌があったのに。


「次は次はー?」

「それで握手をするみたいですね」

「那穂!」

「那緒!」


 二人は握手、というよりかは手を叩き合うといった表現がしっくりくるぐらいの勢いで手を合わせた。


 その瞬間、パチッ! と大きく音を立てて二人の手が離れる。


「いいいったあああああ!」

「うっひょおおおおお!」


 そして飛び上がる二人。あれか、静電気ね。


「どうですか?」

「くっ……痛いとしか言えねえ……」

「いてえ……いてえよ……」


 入れ替わったのか入れ替わっていないのか、それが問題だ。しかし、傍から見てるだけでは分かるわけもなく。そもそもこんなので入れ替わるわけもなく。


「……次、兄ちゃんやってみそ」

「絶対にやらん」

「ダメでしたか……」


 何? ちょっと期待してたのか?


「大丈夫です! まだ通販で届いた物がありますよ!」

「ルル姉、痛くないのにして」


 頭突きは平気だったのに、電気系はダメなのか。じゃあ雷も無理だな。


「安心してください。次はこれです」


 エルフ野さんが取り出したのは白い箱。その中にはお菓子らしき物が入っている。


「これはマカロンか?」

「裏腹マカロンと言うらしいです」

「へえ……」


 裏腹の部分は置いといて、これがマカロンか。テレビなんかでは見ることもあるけど、実際に見たのは初めてだ。あんまり食べたいとなるような感じがしないんだよな。


「これを食べるのか?」

「半分に分けて食べるみたいですね」

「いやあ、ルル姉分かってるね! 甘いものといえば那穂ちゃんってね」

「そうそう、甘いものに巻かれるのが那緒ちゃんだから」


 二人は袋からマカロンを出して半分に分け合う。


「それでは乾杯!」


 そして、それを口に放り込んだ。


「ほほう、中々やりますな」

「これが幸せの味ってやつなんだね」

「どうでしょうか?」

「いいお手前でした」

「……ダメみたいだな」

「でしたら次はこれです!」


 次は袋に入ったクッキーか。


「スイッチクッキーです!」


 食べ物の前にそれらしい単語を付ければいいってもんじゃないと思うんだが……。


「これも半分にして食べるのか?」

「ええ、そうみたいですね」

「くっくっく、いいぜえ、いくらでも食ってやるよ」

「くっくっく、丁度、腹が空いてきたところだってばよ」


 俺も見てるとちょっとお腹が空いてきた。放課後ってそういう時間帯よな。


「ほあたあ!」


 那穂、いや那緒か? どっちでもいいや。片割れがクッキーの詰まった袋に手を鋭く伸ばした。一枚のクッキーが宙に躍り出て、二つに割れる。そこへ二人が口を開けて飛びついた。


 普通に食え。


「うめえ……うめえよ……」

「最高だぜ、あんた……」


 口には合ったようだ。まずいクッキーなんて売りに出さないか。精神が入れ替わるなんて触れ込みで売ってるのなら詐欺だが。今の時代、ジョークで済まそうなんて甘い考えは捨てることだな。


「これもダメでしたか……」


 純真無垢なエルフ野さんが喜んで飛びついちゃうから。


「まあまあ姉御、そう落ち込まんでくだせえ」

「ここはいっちょ、お茶会としゃれ込みやしょう」

「そうですね。まだマカロンとクッキーはありますから。お茶を入れて食べましょうか」

「ひゃっほー! 茶会だ茶会だ!」


 うん、まあ何でもいいんだけどな。


 エルフ野さんは電気ケトルにペットボトルの水を入れてお湯を沸かす。急須にお茶っ葉を入れて準備万端だ。


 何気に小物も増えてるよな。次は水を置いておくための冷蔵庫か。カップラーメンと寝袋でも持ってこれば寝泊りも完璧だな。そのうち先生に怒られそう。

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