斬られ役、死す
155-①
武光は焦った。魔王だけでもとんでもなくヤバイのに、敵が更に現れた。
黒のローブを身に
数は一人……だが、その身に纏う危険な雰囲気から武光は確信していた。こいつも魔王と同じく《俺超強ええから護衛とかいらねーしとか言っちゃう系魔族》だ。
魔王は、現れた老魔族にチラリと
「カンケイか……何をしている?」
「それはこちらの
「花嫁を迎えにやった者がいつまでも戻らぬのでな……直接出向いただけの事よ」
「む……では、この者が以前、
「うむ」
カンケイはナジミに品定めをするような視線を向けた。
「しかし……大した力は持っておらぬようですが……」
「まだ覚醒しておらぬのよ、何、すぐに目覚めさせて…」
「ふんっっっ!!」
“ガキンッッッ!!”
剣を頭上に掲げ、魔王は武光の真っ向斬りを受け止めた。
「余裕ぶっこいてんちゃうぞ!! この腐れ魔お……ぐはっっっ!?」
武光は剣を弾かれ、次の瞬間、顔面への殴打とボディへの後ろ回し蹴りの連撃を喰らい、背後に立っていた木の幹に物凄い勢いで背中から叩き付けられた。
「ふむ……?」
やはりそこらの人間と大して変わらない……先程自分を殴りつけた時の力は何だったのか?
「ぐ……あ……」
〔大丈夫か武光!? しっかりしろ!!〕
四つん這いになりながら、武光は、勢いに任せて魔王に『俺を倒せ!!』などと
視界が揺れ、ほんの少し身体を動かそうとするだけで、全身を激痛が襲う。
だが、後悔している場合ではない。揺れる視線の先では、武光を守ろうと、再び魔王の前に立ちはだかったナジミが、魔王に頭をガッシリと掴まれていた。
「い、嫌っ……は、離して……!!」
武光は『止めろ!!』と叫ぼうとしたが、振り絞ったその声は、激痛で言葉にならなかった。
「目覚めよ……魔族の血よ!!」
ナジミの頭に置かれた魔王の手が光を放つと同時に、ナジミは糸の切れた操り人形のように、力無く地面に倒れ込んでしまった。
「お……お前ぇぇぇぇぇッッッ!!」
倒れたナジミを見た武光は、
「う……ウオオオオオオッッッ!!」
武光は、獣の如き
ナジミが突然立ち上がり、魔王を守るように武光の前に立ち塞がったのだ。
「ナジミ!? 危ないからそこをどけ!!」
「……嫌です」
「はぁ!? お前何言うて……!?」
「黙りなさい、人間風情が……
ナジミの発した言葉に、武光は言葉を失った。
「見せてあげます……私の真の姿を!!」
ナジミの瞳が赤く輝いたかと思うと、背中に三対六枚の光の翼が
ナジミの
「お前ぇぇぇっ!! ナジミに何したんやコラァ!!」
「フフフ、
「ナジミを……元に戻せッッッ!!」
「元に戻せだと? フフフ……笑止、この姿こそが、この者本来の姿よ!!」
「姿形なんかどうでもええ!! 俺は、いつものナジミに戻せって言うとんねんアホが!!」
「無理だな、こうなってしまっては」
「そ、そんな……」
「うふふ……」
武光は思わず振り上げたイットー・リョーダンを下ろし、ヨロヨロと
「さて……これで花嫁は完全に我が手中に落ちた。あとは貴様にとびきりの絶望と死をくれてやるだけだ……」
「くっ……」
〔諦めるな武光!! ナジミは魔王に操られているに違いない、魔王を倒せばきっと……!!〕
「お……応ッッッ!!」
消えかけた闘志の炎を再び燃やし、イットー・リョーダンを正眼に構え直した武光の前に、今度は魔王軍参謀、カンケイが立ち塞がった。
「魔王様は一刻も早く魔王城にお戻りくださいませ、
「カンケイ……出過ぎた真似をするな!! 奴は我が手で──」
「いいえ、お二人のお手を
“グサァッ!!”
言うが早いか、ナジミは武光の元まで飛翔すると、右手の先に光の剣を出現させ、武光の腹を刺し貫いた。
「ぐ……ふっ……う……嘘やろ……ナジミ……ゴホッ!?」
武光は
「ふふふ……」
「ガハッ……!!」
ナジミは武光の腹に深々と突き刺さった光の剣をゆっくりと引き抜くと、腹部の傷口に左の
「さようなら……二度と私の前に姿を見せないで」
“カッ!!”
ナジミは武光の傷口に当てた左の掌に、一抱え程もある巨大な光球を発生させると、渾身の力を込めてぶっ放した。
先程と同じ木の幹に、先程よりも更に凄まじい勢いで叩きつけられた武光は、力無くズルリと崩れ落ちた。
……あかん、力が入れへん……
〔武光!! しっかりしろ!! 武光!!〕
……寒い、めちゃくちゃ寒い……
〔おい!! 武光!?〕
嘘やろ……もしかして……これ……俺……死……
〔武光……? 武光-----っ!!〕
武光は しんでしまった!?
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