巫女、挟まる
137-①
三つの試練を乗り越えた武光は、ついに大賢者の神殿に到着した。
「うおお……すげぇ」
「なんて神秘的な……」
「美しいわ……」
「ええ、とても美しいです」
大賢者の神殿は幾本もの大木の幹が複雑に絡まり、直径約20・高さ約10m程の巨大なドームを形成し、そして木々の枝から生えた緑や赤や黄色……色ととりどりの鮮やかな葉がドーム上部を覆っていた。
大賢者の神殿の幻想的で神秘的な外観に、武光一行は思わず感嘆の声を漏らした。
ソフィアが大樹のドームの壁の前に立ち、武光達を手招きする。
「みなさん、こちらです。お入りください」
「お入りくださいって言われても……入り口が見当たらないんですけど?」
「……大丈夫です」
ソフィアが壁に近付くと、木の幹がまるで生き物の様にゆっくりと左右に動き、人が一人通れそうな隙間を作った。
「すげぇ……ジ◯リっぽい!!」
「《
「は、はい……」
何か、どえらい神聖で
「ふぎゅっ!?」
「ナジミ!?」
最後尾を歩いていたナジミが穴を通ろうとした瞬間、突如として穴が閉じ、ナジミが挟まれてしまった。
隙間はどんどんと狭まって、腰の所でつっかえてしまったナジミは『穴に頭から突っ込んで抜けなくなった人』という、まるで古典的ギャグマンガみたいな状況に
「ひぇぇ〜〜〜た、武光様助けてください〜〜〜」
「よ……よっしゃ待ってろ!! ジャイナと先生も手伝ってください!!」
「分かったわ!!」
「よしきた!!」
「行くで……せーの!!」
「痛たたたたた!? い……痛いです武光様!!」
情けない声で助けを求めるナジミを救出しようと、武光達はナジミの体を引っ張ったり押してみたりしたが、どうにもならない。
「ソフィアさん、何なんですかこれは!?」
「わ、私も初めて見ました。しかし、一つだけ思い当たる事があるとすれば……清心樹は『邪悪なる者を拒む』と、大賢者様から聞いた事がありますが……」
「邪悪なる者なぁ……」
「ちょっ、武光様!? 何なんですかその『ああ、なるほど』みたいな顔は!?」
「いやぁ、お前怒ったらすぐ手ぇ出すやん……」
「そ、それは……武光様が私の事、ドジだの貧乳だのってイジワル言うからじゃないですか!! それに、それを言うならジャイナさんも……ソフィア様だってさっき武光様達をボコボコにしてたじゃないですかー!!」
言われてみれば確かにそうだ。武光は悩んだ末に、ナジミの肩にぽんと手を置いた。
「……さぁ、お前の罪を数えろ!!」
「わ……私は何も悪い事なんかしてませんってば〜!! 判定基準に納得がいきません!!」
「いや、そんなん俺に言われても……」
戸惑う武光にイットー・リョーダンが声をかける。
〔どうする武光、この木を斬り開くか…?〕
「いやいやいや、アホ抜かせお前、御神木に傷なんか付けたら
〔ハーイ!! ハイハイハイ!! ご主人様、私にナっちゃんを穴から抜く良い考えがあります!!〕
「魔っつん、何やその『良い考え』って……?」
〔フッ……逆転の発想です。御神木を傷付ける事が出来ないのなら…………ナっちゃんの方をバラバラにしましょう!!〕
「却下!! ナジミ死ぬやんソレ!!」
〔あっ、そっか……〕
「ううう……ほらー!! やっぱり判定基準がおかしいじゃないですか!! 魔っつんの言動の方がよっぽど凶悪じゃないですかー!!」
「何も泣かんでも……」
「いかがなされたかな? ご客人」
困り果てている武光一行のもとへ、長い髪と髭を蓄えた老エルフがやってきた。
老エルフの姿を見たソフィアが、
「……大賢者様!!」
大賢者が あらわれた!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます