鉄剣、オーバーキる
132-①
武光の前に銀色の髪を持つ二人の青年が姿を現した。
短髪と長髪の二人の青年で、青年達は鈍い光沢を放つ金属製の胸当てを装備し、弓を持ち、耳が長かった。
武光が知る由は無かったが、彼らは《エルフ》と呼ばれる、多数の不思議な能力を操る種属である。
武光はエルフ達の方を向いた。
「フッ……やはり隠れていたかっ!!」
「何が『やはり』よっ、全然見当違いの方向だったじゃない!!」
「や、やかましわっ!! お前なんか、ちっとも気付いてへんかったくせに!!」
「はぁ!? き、気付いてたわよ!!」
「そうだ、貴様……何故我々の存在に気付いた!! 我々の《
武光とミトの言い争いを、長髪のエルフが矢をつがえて
「わーっ!? ちょっ、弓こっち向けんな!!」
「質問に答えろ!!」
「そんな事言われても……何となくあの辺から嫌な気配がしたから……」
そう言って武光は魔穿鉄剣を投げつけた木を指差した。
すると突然、魔穿鉄剣が突き刺さった木の幹がぐらりと『く』の字に曲がったかと思うと、そのままどしんと倒れた。魔穿鉄剣が突き刺さった場所からは……どくどくと真っ赤な血が流れ出し広がってゆく。
「ゲェーーーッ!? な……何じゃこりゃあああああっ!? 気色悪っ!!」
あまりに異様な光景を前に、素っ頓狂な叫びを上げた武光の目の前で、倒れた木はみるみる姿を変え、その正体を現した。
現れたのは、以前、ボゥ・インレで対決した魔将コウカツと同じ種族と思われる魔族だった。
地面に倒れ
「た、大変だ兄上……コイツ、魔王軍の兵士だ。しかも……そこそこ偉い階級の奴だ!!」
「貴様……なんという事をしてくれた!! 我が一族は貴様ら人間達と魔王軍の争いに巻き込まれぬように、《惑いの結界》を張ったこの森に息を潜めて、争いを避けてきたというのに……我々の森で魔王軍の兵が死んだとあれば、魔王軍は我々の存在に気付いて、この森を全て焼き尽くすやもしれん!!」
長髪のエルフのあまりの剣幕に武光は頭を下げた。
「ご、ごめん……」
「ごめんで済むか!!」
その時、倒れている悪魔族に近付いていた短髪のエルフが声を上げた。
「兄上!! まだ息がある!!」
「何!? 本当か!!」
短髪のエルフの言う通り、よくよく見ると悪魔族の男の体は小さく
「致し方あるまい……この者を里に運び込んで治療し、記憶を改竄して還すのだ!!」
「そ、そういうことならウチのドジ巫女が治癒の力持ってますけど……」
慌てふためくエルフ達に、武光達はおずおずと提案した。
「くっ……良いだろう、貴様らも来い!! この者を絶対に死なすわけには──」
〔ご主人様に仇なす
魔穿鉄剣は きずぐちをえぐった!
会心の一撃!
悪魔に 37564の ダメージ!
悪魔は いきたえた!
「ま……魔っつーーーーーん!?」
武光は急いで悪魔族の男に近付いた。死んでいる……明らかに、完璧に、ぐうの音も出ない程に死んでいる。武光は悪魔族の男の腹に深々と突き刺さった魔穿鉄剣を抜いた。
〔ご主人様!! ご主人様の御命を狙った不届き者はこの私が成敗しました!! さぁ……思う存分、私を褒めてください!!〕
「いや、あのな魔っつん……」
〔遠慮は要りません!! さぁ……ばっちこーい!!〕
「だから、その……ハッ!?」
鋭い視線を感じ、武光が恐る恐る背後を振り返ると、エルフの兄弟が
「「な……何やっとんじゃーーーーー!!」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます