巫女、組み合う
108-①
ザンギャクは、リョエンの高熱の火炎弾を背中に受け、更にミトに炎を纏ったカヤ・ビラキで、背中を深く斬りつけられ、思わず
「今や……喰らえぇぇぇぇぇっ!!」
その隙を突いて、武光は魔穿鉄剣のナックルガードに付いた
「ガハァァァッ!?」
今のは手応えがあった!! 武光はザンギャクにトドメを刺すべく、拳を振り上げた。
「もう一ぱ……ぐはぁぁぁッッッ!?」
武光の視界が激しく揺れた。ザンギャクの強烈な膝蹴りを顔面に受け、吹っ飛ばされたのだ。
「……がっ!?」
頭を強打してしまい、ぼんやりする視界の端で、ザンギャクがこちら目掛けて走って来るのが見えた。
武光の意識は、そこで途切れた。
108-②
「…………ハッ!?」
武光が目を覚ましたのは、ジャトレーの工房内にある宿舎の中だった。
「お、俺は一体……?」
ぼんやりとした頭で周囲を見回していると、部屋にナジミが入ってきた。
「あ……ナジミ」
「た……武光様ぁぁぁ~~~っ!!」
「うおっ!?」
「……ぎゃんっ!?」
意識を取り戻した武光を見て、ナジミは嬉しさのあまり武光に抱き付こうとしたが、武光は咄嗟にナジミの額に掌底を入れ、それを阻止した。掌底を喰らったナジミが額を押さえてしゃがみ込む。
「痛たたた……な、何するんですかぁぁぁ~~~」
「だーかーらー、顔から汁出過ぎやねんて!! せめて、鼻水とヨダレは拭けって……いや、そんな事より!! あの鬼は……ザンギャクはどうした!?」
ナジミは、近くに置いてあったチリ紙で鼻をかみ、ハンカチで涙を拭うと質問に答えた。
「姫様が言うには、トドメを刺す直前に敵の増援が現れて、討ち取る事は出来なかったみたいです……」
「ま……マジかっ!?」
「ええ、でも……相手もかなりの深手を負ったみたいで、ここ数日はオーガ達の活動も鎮静化しているみたいです」
「そ、そうか……ん? ここ……数日!?」
「ええ、オーガとの闘いで大怪我を負った武光様がここに運び込まれてから、今日でもう四日目です」
「そ、そんなに気ぃ失ってたんか……」
「はい、私の癒しの力で怪我は治したんですけど、なかなか意識が戻らなくって……もしもこのまま武光様の意識が戻らなかったらと思うと私……怖くて怖くて……うぅ……うわぁぁぁぁぁぁん!!」
「あー、もう!! 泣くな泣くな!!」
「ひゃっ!?」
武光はナジミを思いっきり抱き締めた。
「……どや?」
「……暖かいです」
「めちゃくちゃ元気良く心臓動いてるやろ?」
「……はい」
「お前が治してくれたんや……そう簡単に死ぬわけないやろが」
「……た、武光様」
ナジミは潤んだ瞳で武光を見つめた。
「ナジミ……」
「あっ……」
武光がナジミの目をジッと見つめて
〔イイゾー!! ヤッチマエー!!〕
「「!?」」
武光とナジミは思わず声のした方を見た。壁に……リョエンの機槍・テンガイが立てかけてあった。
「て……テテテテンガイ!?」
「い、いつからそこに!?」
〔サッキ アルジ ガ タケミツ ノ ヨウス ヲ ミニキタ サイ ニ オイテ イカレタ〕
それを聞いた二人は瞬時に顔が真っ赤になった。
〔フタリトモ イケ!! オレニ カマウナ!!〕
「構うわっ!!」
「構いますっ!!」
“ガチャリ”
「「わーっ!?」」
リョエンが扉を開けて、突然部屋に入ってきた。
「いけないいけない、私とした事がテンガイを忘れてしまうとは……って、武光君!? 意識を取り戻したんですか!?」
「はい、心配をおかけしました!!」
「それは良かった!! ところで……えっと……その……お二人は何をしているんです?」
「えっ!? こ、これは……」
……武光とナジミは、リョエンの突然の登場に驚き、慌てに慌てまくった結果……何故かガッチリと組み合い、プロレスでいう所の《ロックアップ》の体勢になっていた。
ナジミがリョエンの質問にテンパりまくってしどろもどろになりながら答える。
「え、えーっとですね……これは、その……私はこうやって組み合う事で相手の身体の悪い所や、精神面の不調なんかが瞬時に判断出来るんですっ!!」
「お前はネ○チューンマンかっ!?」
ナジミのヒド過ぎる言い訳に、武光は思わずツッコんだ。
「は、はぁ……よく分かりませんが、とにかく意識が戻って良かった!! そうだ、イットー・リョーダンの修復がもうすぐ完了するそうです」
「ま、マジかーーー!! うおおおおおーーー!! イットーーー!!」
「武光様ー!?」
武光はドアをぶち破らんばかりの勢いで部屋を飛び出した。
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