斬られ役、鬼を狩る


 100-①


「……おぉぉぉっ!!」


“ザンッッッ!!”


「……でやぁぁぁっ!!」


“ズバァァァッ!!”


「……どりゃあああっ!!」


“ドスッ!!”


「はあっ……はあっ……つ、角を……!!」


 武光はジャトレーから預かった魔穿鉄剣ませんてっけんを手に、オーガへの襲撃を繰り返していた。


 倒した三体のオーガの角を、魔穿鉄剣で切り落とし、『鬼の角、奪ったどーーー!!』と、雄叫びを上げている武光のもとに、武光に物陰に隠れているように言われていたナジミが駆け寄る。


「武光様、大丈夫ですか!? お怪我はありませんか!? 怒り狂っていませんか!?」

「おう!! 全然大丈……おいやめろローリングソバットの構えすんな、大丈夫や言うてるやろ!? いや、それにしても……流石さすがはこの国屈指の刀匠が作った剣や……重いけど、凄い破壊力や。これなら鬼共とも渡り合え……いや、ホンマに大丈夫やから!! お前ローリングソバットしたいだけちゃうんか!?」

「ちょっ、そんな人聞きの悪い事言わないでくださいよ……あっ!? たたた武光様、大っきいオーガです!!」

「うおっ、でっかぁぁぁっ!?」


 3m近い巨体を持つ二本角のオーガが一体、物凄い勢いで向かって来る。


「ナジミ!!」

「ハイっ!! 逃げるんですね!?」

「椅子っ!!」

「えっ!? は、ハイっ!?」


 武光の事、てっきり『逃げる』と言うと思っていたナジミは、慌ててスイ・ミタタリオを座席形態にして、地面に置いた。


「しっかり押さえとけよ!! うおおおおおっ……!!」


“ダンッッッ!!”


 武光は、ナジミが設置したスイ・ミタタリオ(座席形態)を足場にして跳躍した。


「喰らえぇぇぇっ!!」


 魔穿鉄剣を振りかぶり……大型オーガの脳天めがけて、力を込めて振り下ろす。


“ザクッ!!”


 脳天をかち割られ、即死したオーガ崩れ落ちる。空中で無理な動きをしたせいで、着地の時にバランスを大きく崩して派手にすっ転んだ武光だったが、すぐさま起き上がり、オーガの死体から角を切り落とした。


「よっしゃっ、次行くぞ……待ってろよ……イットー!!」


 切り落とした角を、腰に下げた革袋に詰めた武光は再び駆け出した。



 イットー・リョーダンの修復に必要な鬼の角……残り90本



 100-②


 マイク・ターミスタの中心部にあるマイク・ターミスタ行政府……そこに、屈強なオーガ達の中でも、一際大きく、屈強なオーガがいた。


 夜の闇のような漆黒の体に、焔のような赤い髪、そしてひたい金色こんじきの一本角を持つこのオーガこそ、マイク・ターミスタを占領しているオーガ達の総大将、鬼将ザンギャクであった。

 ザンギャクは苛立いらだっていた。今日の昼頃から、手下達が何者かによって次々と襲撃され、あまつさえ、オーガ一族の力の源であり、強さの象徴でもある角がぎ落とされ、奪われているのである。

 また一人、配下が報告にやって来た。今度は四人が襲撃され、殺られたらしい。そして、殺された連中はやはり角を奪われているとの事だ。

 ザンギャクは声を荒げて、傍らに立つ弟……黒肌銀角のオーガ、ボウギャクに命じた。


「ボウギャクよ……どうやら俺達に喧嘩を売ろうっていう命知らずがいるらしい。そいつをここに連れて来い!!」

「分かったぜ、兄者!!」


 命令を受けたボウギャクは天に向かって、野獣の如き咆哮をあげた。ボウギャクはオーガ一族の中でも随一の凶暴性を持つ、暴虐なるオーガなのだ。


「おっと……殺すんじゃねーぞボウギャク。俺は子分を何人も殺られたんだ……そいつは、この俺様が、目を潰し、耳と鼻をぎ、指を一本ずつ切り落とした後、苦しめに苦しめ抜いて殺す!!」

「おう!! 行くぞ……野郎共!!」


 武光を捕らえるべく、オーガ達が動き出した。

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