斬られ役、傀儡(くぐつ)と戦う(後編)
69-①
すんでの所で、リョエンとナジミが追いついてきた。
「無事ですか!? 武光君、ひ……じゃなかった、ジャイナさん!!」
「せ、先生……ナジミ!! た、助かりまし……うおっ!?」
燃え盛る炎の中からムカクが姿を現した。あれだけ激しい炎に包まれたにもかかわらず、ムカクはまるで傷付いていなかった。
「ゲェーッ!? う、嘘やろ……先生の炎龍が効いてへん!?」
「見たか!! ムカクの鎧は
「……ならば!!」
リョエンはすぐそばの地面に突き立ててあった機槍テンガイを抜き、穂先をムカクに向けて正眼に構えた。四術に対する備えは万全でも……編み出されたばかりの雷術に対する防御策は立てていないはずだ。
「武光君から教わった《アシガル流槍術》……今こそ披露しましょう!! 行きますよ、テンガイ!!」
〔ハイヨロコンデー!!〕
(右手は固く……左手は柔らかく握る!! ……腕だけではなく、膝と腰……全身を使って……!!)
武光に教わった事を頭の中で
「腰を落として……目標をしっかりと
〔シニサラセーーー!!〕
“ガァン!!”
「うわっ!?」
〔カタイッ!! マジウケル!!〕
雷導針を打ち込むべく繰り出されたリョエン渾身の刺突は、ムカクの分厚い鎧に弾き返されてしまった。
「くっ……ならばっ!!」
一旦跳び下がってムカクと距離を取ったリョエンは、左右の手をスライドさせるようにしてテンガイを持ち替え、
「とおっ!!」
〔イシヅキ シャシュツ!!〕
釣り針を水中に投げ込む要領で、リョエンがテンガイを縦に振るうと、石突きの部分が外れた。
ムカクは
「今だ!! 雷術……《
テンガイから伸びた鋼線……《
電撃を浴びたムカクは武器を取り落とした後、ガクリと
「よし!! トドメだ……って、あ、アレッ!? か、絡まった鎖斧が重くて……う……動けない!?」
〔コノ ナンジャクモノッ!!〕
「リョエンさん、ここは私が!! 武光!! 貴方は絡まった鎖を何とかしなさい!!」
「お、おう!!」
ミトは、カヤ・ビラキを左脇に構えると、ムカク目掛けて突進した。いかに全身が分厚い鎧に覆われていようとも、関節部分までは完全には覆えない筈だ。
「でやぁぁぁっ!!」
ムカクの
“ガッ!!”
間一髪、意識を取り戻したムカクは
「……そんな!? 貴方は……っ!!」
仮面の下から現れた顔を見て、ミトは一瞬言葉を失った。
「……ベン!! ベン=エルノマエ!!」
ムカクの正体は、ボゥ・インレでの戦闘で生死不明となっていたベン=エルノマエだった。
「ああ……ベン、良かった……貴方生きて──」
正体を知ったミトは剣を引き、その手をベンに触れようとした……が!!
〔姫様!! 下がって!!〕
カヤ・ビラキの声を聞いて、ミトは反射的に後方に跳び下がった。
直後、ミトの立っていた場所に岩の如き拳が振り下ろされた。その一撃は、先程までとは打って変わって殺意に満ちたものだった。
ゆらりと立ち上がったベンが、背負っていた
「ベン!? どうしたの!? 私が分からないの!? ベン!!」
ミトは必死に呼びかけるが、ベンの攻撃は止まらない。
「お願いベン!! やめて!!」
〔姫様、きっと彼はあの死霊魔術師に操られているのです〕
「そ、そうね!! あいつさえ倒せば……って、うぇぇっ!?」
ミトの視線の先では、ナジミがセンノウをボコボコにしていた。
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