斬られ役、逃走する
66-①
リヴァル達がクラフ・コーナン城塞北西の丘にて、破壊神砲を敵の手から守るべく防衛戦を繰り広げていたその頃、武光一行は
現在、クツーフ・ウトフ城塞から進軍してきた主力軍は四番稜堡と五番稜堡の間の南西門に攻撃を仕掛け、ジューン・サンプ方面から進軍してきた別働隊は一番稜堡と二番稜堡の間の北東門に攻撃を仕掛けている。
未だ結界は破られていないが、破壊神砲の初弾が北東門上部の城壁をごっそりと抉りとった事で、稜堡から稜堡への敵兵の移動がかなり制限されたようだ。
ここで更に、南東門にも攻撃を仕掛けて、敵を釘付けにして連携を阻害すれば主力が対峙している南西門側と、別働隊が対峙している北東門側の負担がかなり減る。
武光達を始めとする、魔王討伐に名乗りを上げた傭兵達で編成された攻撃部隊百人は、敵に気取られぬよう、戦場を大きく迂回して進軍していた。
行軍の
「ちょっと!! 何処へ行く気なの!? まさか……また逃げる気じゃないでしょうね?」
「アホか、ウ◯コくらいさせろ!! すぐ戻ってくるから!! 心配やったら見張っとくか!?」
「わ、分かったわよ……早く済ませて来なさい!!」
「すまん」
そう言うと武光は近くの雑木林にそそくさと入って行った。
〜 待つことおよそ20分 〜
「…………戻ってこないわね」
「…………戻ってきませんね」
「…………戻ってこないですね」
ミト、ナジミ、リョエンの三人は、顔を見合わせた。
「「「……に、逃げたぁぁぁぁっ!?」」」
三人は急いで雑木林の中に入った。案の定、武光の姿はどこにも無かった。
「た、武光様、またビビり
「あ、あの馬鹿……見つけたら処刑よ、処刑!!」
「姫様、こちらに武光君のものと
「追うのよ!! 首根っこ掴んででも引きずり戻してやるわ!!」
ミト達は大慌てで武光の足跡を追った。
66-②
「うわぁぁぁぁぁ、最低やーーーーー!! 逃げてしもたーーーーー!!」
風速100〔m/s〕クラスの臆病風ハリケーンに吹かれ、武光は逃げ出した。
そして、逃げて逃げて逃げまくって辿り着いた、クラフ・コーナン城塞の南にある森の中で、武光はしゃがみ込んで頭を抱えていた。
「俺最低やんけ……イットー、何で俺が逃げ出した時に止めへんかったんや!?」
〔いやいやいや、止めたって君は逃げるでしょう、どうせ〕
「ぐぬぬ……」
〔ま、僕はあんまり心配してないけどね……あっ!? ナジミ達が魔物に襲われてる!!〕
「何っ!? どこや!!」
武光は慌てて周囲を見回したが、ナジミ達や魔物の姿など、どこにも無かった。
〔……ほらね? 仲間が魔物に襲われてるって聞いて、君は逃げるよりも……
言われて、武光は手元を見た。無意識の内に右手はイットー・リョーダンの柄をがっちりと握っていた。
〔君はそういう奴なんだよ。ビビりで、ヘタレで、足も臭いけど、最後の最後には誰かの為に勇気を振り絞っちゃうんだよ、どうせ〕
「ぬぅ……」
〔武光、もっと自分に自信を持て。確かに君は、めちゃくちゃ強いわけじゃないけど……決して弱くなんかない。セイ・サンゼン、ボゥ・インレ、そしてジューン・サンプ……君が震えながら必死こいて
「うん……何か、最後の一言で台無しやわ」
〔うそーん!?〕
「ははは、冗談や。そっか…………そやな。アイツらの
武光が立ち上がったその時だった。
“ドゴォ!!”
「おわーーーっ!?」
武光の足元に、突如として、長い鎖で繋がれたトゲ付き鉄球が撃ち込まれた。
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