第351話本番前日の演奏会場

光の学園の音楽部演奏会の前日、奈良から、突然楓が上京してきた。

そして、そのまま、第九交響曲のリハーサルをやっている演奏会場のホールに姿を見せ、客席に座った。

大きな旅行鞄を持っていることから、駅から直接、このホールに来たようだ。


舞台袖口にいた春奈は、焦った。

「マジ?何の連絡もなく・・・」

「あの大食らいが・・・お米足りるかな」


ソフィーは、何となくわかった。

「きっと光君のスマホにはメッセージを送ってある」

「でも、光君は、アホでナマケモノだから、そんなの見ない」


ステージの巫女たちも、ソフィーの「わかったこと」をすぐに読んだ。


華奈は、春奈に文句を言い、またいつもの思考回路に入る。

「光さんは、そういう人だけど、それを教育できない春奈さんが悪いの」

「教師失格だなあ、だから任せられないっていうの、さっさと私に決めない光さんも悪い」


由紀は、歌の出番を待ちながら、困り顔。

「はぁ・・・まさか・・・ここで爆発しないよね、私たちみたいな事情を知っている人ならいいけど、マジ恥ずかしい」

その由紀の隣には、保護対象である柏木綾子も立っている。


ルシェールも歌の出番を待ちながら、不機嫌な顔。

「また、楓ちゃんで混乱する、面白い時もあるけれど、光君の運命と第九なんて、滅多に一緒にできないんだから、マジで邪魔」


由香利も歌の出番を待ちながら、しっかりと事情を読む。

「おそらく、春日大社で母親巫女と一緒に祝詞をするのが、面倒だったし・・・別の目的もあるかな」

「私も、若い巫女仲間に入ろうってこともある」

「でも・・・これも、真言立川流対策かな、力強いかも、あのパワー」


キャサリンはうれしそう。

「邪宗をあの大声と薬で倒すのかな、それも楽しみ」


サラも楓を見て分析。

「楓ちゃん、また霊力も技術もあがっている、強くなったかな、それが文句の凄まじさに直結するし、うるさいけれど面白い」


春麗は、途中から楓と目で話をしている。

「そうか・・・邪気封じの薬なんだ、それを持ってきたんだ」

「うん、かなり強め?」

そして笑った。

「プッ!光君には関係ないって?普通の男の人用?」

「どういう意味?・・・わかるけれど・・・」



さて、光は、楓と巫女たちのことなど、全くお構いなく「第九」を流麗に、壮大に振り続ける。


それを客席で聞いている大指揮者の小沢は、感心しきり。

「おそらく100%の力では振っていないけれど、心にグングン響く」

「リハーサルだから、今までの練習通りを徹底」

「だから奏者も、安心して演奏できる」

「・・・あとは、本番で、どう弾けるか・・・」

「それは、光君と、その本番時点で、応じればいいこと」

「音楽の神に、全てお任せと」


演奏会場のホールの外には、金剛力士二体が、「人の目」には見えないように立っている。

また、四方には、四天王が、同じように人に見えないように立つ。

上空には、八部衆の神集団が浮かんでいる。

また、天使長ミカエル、アポロも羽を生やし、浮かんでいる。


坊主頭に袈裟、錫杖と宝珠を持った地蔵菩薩も現れた。

そして、不思議な「印」を結ぶ。

すると、演奏会場の建物を大きく囲むように、透明で薄紫色のシールド結界が出来上がった。

「これは地蔵の秘術、この結界を通過すると・・・」

地蔵は、印を結び、呪文を唱え続けている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます