第350話豊村の次の計画

「無い!・・・何も無い!」

麻紀は、身体全体がまず、硬直。

そして、ヘナヘナと腰が抜けてしまった。


豊村の手は、麻紀の首をつかんだまま。

「おい!麻紀!髑髏はどうした!」

「どこに運んだ!」


麻紀の目の前、つまり本堂に、うず高く積んであったはずの髑髏が何も無い。

その祭壇も何も無い。


「いや・・・私は・・・諏訪の娘と、親の禰宜が・・・」

「あのレスラー崩れの大男の不始末で、いなくなったので・・・」

「仕方なく・・・次の生贄をと・・・街に・・・」

麻紀は、こうなってしまっては、仕方が無いと思った。

素直に、白状する。


「この馬鹿女!」

豊村は、いきなり掴んでいた手を離し、麻紀を殴りつけた。

麻紀の頭は、その勢いで、本堂の床に叩きつけられる。


「ギャッ!」

あまりの痛さと衝撃で、麻紀は悲鳴をあげた。

すでに額が割れたようだ。

血が本堂の床に流れだしている。


痛みで、意識が消えそうな麻紀をそのままに、豊村が本堂の中を歩き回る。


「それにしても、おかしい」

「あれほどの髑髏が何故、消える」

「麻紀の華奢な力で無理だ」

「それにレスラー崩れの大男も極道の姿もない」


豊村は、本堂の中央で、座り込んだ。

「この下の焼却炉・・・」

「リモコンは、あの大男が持っていたはず」


しかし、大男の姿は見えない。


「壁際にスイッチがあったはず」

豊村は、本堂床下の焼却炉を開けるスイッチが、本堂の壁際にあったことを思い出した。


「ここか・・・」

豊村が、そのスイッチを押す。

しかし、何の反応も無い。


「何故だ!」

何度も押しても全く反応が無い。

そして、ついにあきらめた。


「こんなことでは、時間の無駄だ」

倒れたままの麻紀に向き直った。


「麻紀・・・」

「レスラー崩れも、極道も、行方が分からなければ、仕方が無い」

「お前と俺の時に作った薬を撒く、お前が演奏会とやらに潜り込め」


麻紀は、フラフラと顔をあげる。

「まだ・・・残っていたのですか・・・」


豊村は、頷く。

「ああ、半分くらいは残してある、培養もできる」

「できれば、諏訪の娘とのほうが新鮮で、俺も楽しみにしていたけれど」


麻紀は、悔しそうな顔。


豊村は、酷薄な顔。

「あの諏訪の娘のほうが、お前より上玉だ」

「何、諏訪の娘は、騒動の後、手にかければいい、それだけのこと」


麻紀が再び悔しそうな顔。


豊村は、その麻紀に再び近づく。

「いいか・・・麻紀・・・今度失敗したら、裸にして駅を歩かせるぞ・・・」

麻紀の顔は、凍りついている。

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