第349話組織の指示と本堂の異変?

古びた寺の本堂から、次の生贄を探しに、若い女は街をぶらついている。

しかし、ただ、ぶらついているわけではない。

しっかりと生贄となることができる「高い霊的能力を持つ美しい娘で、かつ処女」を見つけなければならないのである。

そのため、自らの透視能力を駆使して探すけれど、なかなか見つからない。


ブツブツとつぶやきながら、歩き回る。


「ったく・・・変な邪魔が入った」

「あの諏訪の娘がよかったのに、能力も高い」

「組織も、認めていた」

「大満足で褒められたりもした」

「そもそも、生贄の能力が高くなければ、効果のある薬は作れない」

「組織の指示は、髑髏本尊の儀式を行って、あの諏訪の娘を生贄に、魔の媚薬を作れと」

「ちょうどいいことに、あの娘の学園で、演奏会をするというから、そこで撒けと・・・」

「確かに、紛れ込ませるのも、簡単だ」

「強い媚薬を粉末にして、演奏会のホールで振りまく」

「途端に、ホールは愛欲と錯乱の場に」

「その愛欲と錯乱から出た汗は、大気中に拡散」

「それが、絶大な効果をなす・・・というのに」


若い女は、歩き回りながら、こんなことも考える。

「組織も、別に、演奏会などを狙わなくても、良かったかもしれないけどなあ・・・」

「媚薬を撒くだけなら、人が集まる繁華街とか、駅や列車内でも十分と思うけれど」


歩き回っていると、若くて美しい処女は、かなりいる。

「問題は、霊能力がある娘がいない」


若い娘は、途中で面倒になった。

「間に合わないって、こんなんじゃ・・・」

探すのをあきらめようとも思う。


しかし、すぐに首を横に振る。

「組織の上からのお達しだからなあ」

「あの諏訪の娘の学園の演奏会で媚薬を撒けってのは」

「違うことをすれば、こっちが殺される」

「八つ裂き、車裂き・・・死体は犬に食われる」

「男は、焼却炉か・・・」

そこまで思ったところで、若い女は本堂のことを思い出した。


「始末は終わったのかな」

「せめて、髑髏だけでも、増えていないと、組織が来た時に、また責められる」

「あのレスラー崩れの大男・・・何をボケてるんだ」

「鈴の音?貧相な坊主?それで鍵が開いて、鎖も南京錠も外れた?」

「そんなのが組織で通用しないって」

「とりあえず、髑髏だけでも確認するか」

「生贄は、また、街に出よう」


繁華街での「高い霊能力を持つ、若く美しい処女」の探索を一旦あきらめ、若い女は、再び古びた寺の門まで戻った。

すると、本堂の前に、一人、男が立っている。


「おい!麻紀!」

男は、かなり精悍な容姿。

見るからに格闘が強そうな雰囲気。


「麻紀」と呼ばれた若い女は、その男を見ただけで、身体が震えた。

「あ・・・これは・・・豊村様・・・何用で・・・」


その「豊村」がツカツカと麻紀に歩みよった。

そして、そのまま麻紀の首をつかみ、恐ろしいほどの低い声。


「おい!麻紀!何があった!」

「諏訪の娘はどうした!」

「監禁したはずの諏訪の娘の両親は、どこに行った!」

「レスラー崩れの男も、極道も・・・」


麻紀は、全く答えられない。

何しろ震えてしまって声が出ない。


豊村は、そのまま、麻紀を本堂まで引きずり、扉を開けた。

麻紀は、目を見開いた。

本堂の中は、見たこともないような状態に変わっている。

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