第345話聖なる浄化の儀式と地蔵の秘力

「綾子さん」

もう一人は、長身で長髪の男性が、綾子に声をかけた。


「はい」

綾子は、その男性に跪く。


「もう心配はいらない」

もう一人は、長身で長髪の男性が、綾子の肩にそっと手を触れた。


「え?」

綾子は、驚くけれど、手をあてられた肩が、最初は熱い。

しかし、いつのまにか、全身の力が抜けてしまうほど、心地よい。


「全ての悪霊を消します」

「主なる神の御慈悲を」

長身で長髪の男性の、やさしい言葉が、身体中に響く。


「ありがとうございます」

綾子は、それを言うのが精いっぱい。

あまりの心地よさに、意識も遠くなる。

そして、いつのまにか目を閉じ、眠ってしまった。



「・・・綾子」

「綾子・・・」

父と母の声が、耳元で聞こえて来る。


綾子は、自分が夢を見ていると思った。

すごく眠くて、眠ってしまったのだから。

そして、父と母は「教団の偉い人」に、突然、注射を打たれ、どこかに連行されたはず。

そして、自分もつかまる寸前に、窓から飛び降りて、学園に登校。

諏訪大神のお札を握りしめて、光を頼った。

だから、父と母の声など、聞こえるはずはないと思っている。


「綾子」

今度はしっかりとした父の声。

「もう大丈夫だよ、心配しないで」

母の声もはっきりとしている。


「え・・・どうなったの?」

綾子がゆっくりと目をあけると、まず目に入ったのは、涙を流した父と母の顔。

そして、その後方に光、華奈、春奈先生、由紀、キャサリン、サラ、春麗、去年卒業した由香利や、時々学園に来るルシェールの顔が見えている。


「起きて」

綾子は背中に母の腕を感じた。


「光君のお陰で助かったんだ」

父が綾子の手を握る。


綾子は、光の顔を見る。

「光さん・・・これは・・・」

まず、自分の身体の中の不快感が全くない。

そして、生きているか死んでいるかわからなかった父と母が目の前にいる。

自分の足も地についているし、どうみても夢ではない。


光が、口を開いた。

「まず、綾子ちゃんについては、この教会で浄化の儀式を行った」

「聖母マリア様と・・・」

「それから、その御子イエスの浄化の儀式」


綾子は、身体を震わせて、何も言うことができない。


光は言葉を続けた。

「綾子ちゃんのお父さんとお母さんを救い出したのは」


その言葉と同時に、地蔵菩薩が出現。

「地獄に仏の地蔵です」

「彼らには何も気づかせず、綾子ちゃんの、お父さんとお母さんをお連れしました」

地蔵は、やさしい笑みを浮かべている。

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