第343話地蔵菩薩から綾子への御言葉 バスは大聖堂前に

「ご心配はごもっとも」


不思議な鈴の音が鳴りやむと同時に、地蔵菩薩が出現した。

坊主頭、袈裟、草履、錫杖に宝珠、いつもの地蔵菩薩の姿であるけれど、柏木綾子は、初めて見る姿。

驚いてしまって、身体が硬直している。


そんな綾子に地蔵菩薩が声をかける。


「そんな驚かれなくても」

「私は、地蔵です」

「人々を地獄から救うのが本願」

「声をお掛けしていただければ、どんな人でも、救いますよ」

とにかく、やさしい声の響き。

硬直していた柏木綾子の身体の緊張が、少しずつとけていく。


光が地蔵菩薩に声をかけた。

「まだ、大丈夫なのかな」


地蔵は、頷く。

「はい、ご安心を、厳しい状況ではありますが、望みはあります」

「地蔵は、別の名は、全ての霊を司る閻魔、しっかりと把握しています」


綾子は、いきなり立ち上がった。

そして、地蔵の前にひざまずき、その手を握る。


「お願いです!父と母をお救いください」

「私・・・逃げて来てしまって・・・」

「もう・・・不安で申し訳なくて・・・」

その後は、言葉にならない。

泣きじゃくっている。


その綾子に、再び、地蔵から声がかけられた。

「ご心配には及びません」

「綾子さん、お父さまとお母様の、安寧を祈り続けてください」

「それから、後は、この地蔵にお任せを」

再び、錫杖の鈴が鳴った。

と、同時に、地蔵菩薩の姿は、校長室から消えている。


光が、綾子に声をかけた。

「綾子ちゃん、お父さんとお母さんのことは、お地蔵さんに頼んだ」

「決して、悪いようにはならない」

「僕たちを信じて」


綾子が頷くと、ソフィーが諭す。


「今回は、邪念との戦い」

「清浄で一途な心が、とにかく大切」

「闇の中でも、消えない希望の光」

「泥の中からでも、清らかな心があれば、蓮は美しい花を咲かせる」




一行を乗せたバスは、大聖堂の門に到着した。

華奈は、綾子と腕を組み、バスを降りた。

「大丈夫、全て結界で守られているから」


春奈も綾子に声をかけた。

「ね、綾子ちゃん、あそこには金剛力士様」

「歴史の教科書で見たことがあるでしょ?」


綾子は、またしても目をパチクリ。

「・・・マジ・・・ですか?」


光が、笑った。

「うん、あの金剛力士もひどく、ゴツイ顔と身体だけどさ」

「あの空に浮かぶのも、ゴツイよ」

「オッサン顔でさ、四天王って言うんだ」


綾子は、目に見えてしまった「異形」の連続で、驚くばかり。


ただ、「ゴツイ」などと言われてしまった金剛力士二体と四天王は、ますますゴツイ顔となり、光を見ている。

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