第342話綾子の複雑な事情、そして対策

赤坂の大聖堂に向かう完全結界のバスを待つ間、柏木綾子から、さらに怖ろしいことが語られた。


「あの・・・父と母が・・・」

綾子は、その言葉の途中で、泣き出してしまう。


「綾子ちゃん、言える範囲でいいよ、聞いてる」

華奈が、綾子の背中に腕をまわして支える。


綾子は、必死に言葉を続ける。

「教団の人に、昨日・・・変な薬を飲まされて・・・ほぼ・・・意識がなくて」

「今は・・・生きているかいないか・・・」


巫女全員の顔が厳しくなった。

春奈

「それで・・・学園に来れたの?」

「お父さんとお母さんが、そんな状態なのに?」


綾子は、涙を流し続け、必死に答える。

「はい・・・父と母が・・・何かあったら、とにかく学園に逃げろって」

「その薬を飲まされる前に聞かされていて」

「学園なら、大丈夫だって・・・」

「学園について・・・光さんを頼れって・・・」


ソフィーは、目を輝かせて、綾子の父と母を「読んだ」。

「綾子ちゃんのお父様は、諏訪様の禰宜と、お母様は巫女だね、前は」


綾子は、身体をビクンと震わせて、頷く。

春奈

「そうか、その禰宜と巫女の力で、光君とか、私たちのことをわかったんだ」

綾子が頷くと、他の巫女も納得したらしい、一斉に頷いた。


華奈が綾子に声をかけた。

「綾子ちゃんが握っているのは、諏訪様のお札?」

綾子は、頷いて手を開く。

確かに、諏訪大社の厄除け札を握りしめていた。


光が口を開いた。

「綾子ちゃん、その札を握って、必死に逃げたんだね」

「お父さんとお母さんは、心配だったけれど」

「・・・でも・・・そのまま、残っても、綾子ちゃんの身もあぶない」

「そのいかがわしい儀式の犠牲にされ・・・とても、正気の人生など送れない」


綾子は、華奈に支えられたまま、号泣となった。

この時点で、話ができるような状態ではない。


「こうなると・・・」

光が、難しい顔。


ソフィーも同じように難しい。

「単純に、その邪宗集団をつぶせばいいとはいかないね」

「綾子ちゃんのお父さんとお母さんの心配もある」


光は腕を組んだ。

「おそらく仮死状態、生かされているだけだと思う」

「綾子ちゃんの犠牲儀式までの、人質」

「しかし、儀式が終われば・・・」

その先のことは、光も口にしない。


春奈が、光の顔を見た。

「こうなった場合は?」


ソフィーも難しい顔で光を見る。

「あのお方に?」

頼む「お方」も想定できたようだ。


光は厳しい顔のまま、頷いた。

「地獄に仏、あの仏様を呼ぶ」


一行が押し黙って、静かになった時だった。


「チリン、チリン、チリン・・・・」


校長室の廊下から、不思議な鈴の音が、聞こえて来た。

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