第340話髑髏本尊の儀式 綾子の涙

ずっと黙っていた光がソフィーに声をかけた。

「こういう説明は、ソフィーかな」

「ためらっている場合ではないと思う」


ソフィーも、仕方ないと思ったようだ。

「高校のこういう場所で、話をするには、いささか問題があると思うけれど」

「あくまでも、そういう宗教の考えとか儀式があると思って聞いてもらいたい」


そして、ソフィーは柏木綾子に低い声で

「真言立川流の儀式だよね」

と言うと、柏木綾子の肩がビクッと動く。

そして、声が震えた。

「はい・・・その儀式に・・・私・・・」

柏木綾子は、校長室を見回した。

「でも・・・校内では危険・・・かも・・・」

その肩が震えだす。


華奈が、柏木綾子をなだめた。

「大丈夫、任せて」

その華奈の手には、伊勢様の鏡が握られている。


ソフィーが、声を落として、説明をはじめた。

「真言立川流は、陰陽の二道と真言密教の教理から展開したもの」

「男女交合の快楽を即身成仏の境地と見なし、男女交合の姿を曼荼羅として図現している」


「儀式に関しては、有名なものは髑髏を本尊とする『髑髏本尊』という儀式」

「髑髏本尊はいろんな種類があるけれど、使われる髑髏は王や親などの髑髏、縫合線の全く無い髑髏、千頂といって1000人の髑髏の上部を集めたものなど」

「特別に、法界髏という儀式を行って選ばれた髑髏を用いなければならない」


「こうして選ばれた髑髏の表面に男女の性交の際の和合水、それは精液と愛液の混ざった液になるけれど、それをを幾千回も塗り、それを糊として金箔や銀箔を貼り、さらに髑髏の内部に呪符を入れ、曼荼羅を書き、肉付けし、山海の珍味を供える」


「しかもその儀式の間絶え間なく本尊の前で性交し、真言を唱えていなければならない」


「この独特な儀式の根拠としては、理趣経」

「理趣経は、本来男性と女性の陰陽があって初めて物事が成ると説く」


「真言立川流の真髄は性交によって男女が真言宗の本尊、大日如来と一体になること、男女交合の快楽が、即身成仏の境地とする」

「そもそも、真言立川流は密教、人間はそもそも汚れたものではないというという考え方が基本なのだけど」


ソフィーの長い説明は、ここで一旦終わった。


由紀がポツリ。

「すさまじい・・・宗教だけど・・・」


春奈は、頭を抱えた。

「髑髏って・・・それをどうやって集める・・・怖い・・・犯罪だよ」


華奈は、手に持った鏡を必死に握っている。

「伊勢様の御神鏡に全て、吸い込ませているけれど、マジ、怖い」


キャサリンが綾子に尋ねた。

「綾子ちゃんは、その儀式に?」


綾子の肩が激しく震えた。

「はい・・・嫌です・・・そんな・・・好きでもない人と・・・無理やりなんて」

顔をおおって泣き出してしまった。


サラが、校長室にいる全員の顔を見た。

「ねえ、守ろうよ、学校の仲間だよ」


春麗も頷く。

「コンサートの前に、まず・・・綾子ちゃんを救おう」


光は、目を閉じて、何かを考えている。

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