第328話春日様の秘法 光(阿修羅)の哀し気な顔 ソフィーの怒り

光は再び胸の前で手を合わせ、不思議な呪文を唱えた。

すると、途端にまた異変が起きた。


華奈が叫んだ。

「あ!光さんに両目をつぶされた総監督の目から、赤黒い光!」

由紀も身を乗り出した。

「え?そのまま天井の蜘蛛に吸い取られていく!」

由香利は、倒れたままのブラジリアン柔術の選手を見た。

「ねえ!あの人たちも!目から赤黒い光が・・・蜘蛛に向かって」

春奈は、その赤黒い光を吸い取る蜘蛛をじっと見る。

「さすが春日様の聖なる蜘蛛、それを苦労して光君が探して来たんだ」

「楓ちゃんも、光君の指示にしたがって、懸命に薬を作って」


キャサリンもこれは見たことがないようす。

「日本の古代からの秘術、まだまだ、隠された知らないことが多い」

春麗は大興奮。

「これは・・・さすがに山紫水明の日本でなくては、難しい」


サラは、立ち合い試合場に再び進み、光と楓に頭を下げる。

「ありがとうございました。メデューサの手先と言っても、強い相手」

「それをこんな方法で倒すとは」


光は笑って首を横に振る。

「いや、メデューサ本体ではないからさ」

「メデューサ本体を倒すときは、また別のやり方がある」


そしてその顔を少し曇らせた。

「メデューサ自身、自分自身の目の魔力を嫌がっている」

「そもそも、メデューサが望んで身に着けた魔力ではない」

「陥れられたような、哀しさがある」


光は言葉を選んでいる。

「・・・一度、ゆっくりと話して、わだかまりを癒したい」

「もともと、美しい姫だ」

「あの、明るい輝く笑顔、ハツラツとした美しい身体」

光の目が輝いている。


サラは、これは光ではなく、阿修羅が過去のこと、神霊界のことを語っていると理解した。

「それは・・・痛み入ります・・・」

「私どもの発祥した地で、悪霊と化してしまったメデューサ」

「是非、御助力を」

サラは、本当に感じいったのか、少しずつ、光にすり寄っていく。


光は、また、哀しそうな顔。

「何故に、こんな悪行を、手先に命じて、この日本でしたかったのか」

「おそらく、この阿修羅に、本気で立ち向かうとか、倒そうなどとかの意図は感じなかった」

「そんなことをするのなら、もっと強力な相手を用意するべきだ」


黙っていた楓が口を開いた。

「おそらくね、手下が倒されるなんてのは、承知の上さ」

「それでもね、メデューサは、久しぶりに、この世に出現した阿修羅の宿り子の光君に、なんとか接触したかった」

「接触して、自分の哀しみに気がついて欲しかったのかな」


春奈が試合場に歩いてきて、倒れているブラジリアン柔術の選手を見る。

「うん、毒気が全て抜けている、目も青くなった」

「光君の言う通り、操られれていただけ」

「この選手たちも可哀そうさ、思いっきりコテンパンにやられて」


試合会場の天井に浮かんでいたソフィーが降りてきた。


「そうは言っても、爆発物の問題、悪意のある薬の問題は消えない」

「不問に処すわけにはいかない」

「それから、ここの会場周囲には、実に多くの小型爆弾が仕掛けられていた」

「電柱のあちらこちらにね、下手をすれば、かなり広い地域で大爆発、大停電、甚大な被害が発生していた」

「厚生労働省、医師会、地域警察、与野党の国会議員への不審な献金などなど・・・全て調べ上げた」

ソフィーは、見たことのないほど、厳しい顔をしている。

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