第327話光vsメデューサの手先(2)春日様の秘法、そして大蜘蛛

審判の「はじめ!」の号令がかかった。

しかし、光は何も動かない。

長身のブラジリアン柔術の総監督は、せせら笑いながら、光に迫る。


・・・しかし、その足は途中で止まった。

タックルの構えだけはしているけれど、身体をそこから動かさない。


坂口がつぶやいた。

「気がついたか・・・」

「うかつに組みつこうとすれば、恐ろしく速い打撃が来る」

「それが当たれば、倒れ込んで寝技を狙うどころではない」

「春麗や吽形と同じ、一撃で決着がつく」


斎藤も頷く。

「光君の身体は、すごく柔らかいんです」

「関節を狙っても、簡単には極まりません」

「それも、身体の動かし方で見抜いているはず」



格闘者二人とは異なり、ソフィーはまた別の観点から、光とブラジリアン柔術の総監督を見ている。

「今の光君の戦闘力や戦闘技術は阿修羅そのもの」

「ただ・・・あの総監督は・・・少しずつ変化しつつある」

サラも、ソフィーと同じ見方。

「あの、光君を見る目が、異様です」

「あの目は・・・普通の人が見たら、身体が硬直するほどの恐ろしさ」

キャサリンも、総監督の目を見て、すぐにそむけた。

「あれは・・・完璧ではないけれど・・・もしかしてメデューサの?」

春麗も頷いた。

「おそらく、人レベルでは十分に通用する目の威嚇」


その光が突然、動いた。

ブラジリアン柔術の総監督に向かって跳躍.

そして光の両ひざが、総監督の両目を直撃。

あまりの速さに、ブラジリアン柔術の総監督は何もできなかった。

そして、そのまま、両目から赤い血を流し、ほぼ意識はない。


「一本!」

審判が光の勝利を告げた瞬間、宙に浮かんでいたソフィーが楓から受け取った薬壺を開き、試合会場全体に振りまいた。



異変が起きた。

ソフィーが振りまいた楓の薬は、真っ白とした煙に変わる。

その白い煙りは、ほのかに藤の香りがする。


白い煙の中、楓の声が聞こえて来た。

「この香りは、春日様の神藤の香りに、特別な呪法を施したもの」

「藤の花の香りは、抗酸化効果が高いの」

「医学的には、ガンや糖尿病、動脈硬化を発生させる原因の活性酸素による酸化を抑える効果になるの」

「その抗酸化効果を、さらに春日様の御神意をいただいて、高めたの」


光の声も聞こえて来た。

「ブラジリアン柔術の総監督も、選手たちも、メデューサの手下だった」

「まだまだ、本体ではない、技も未熟」

「彼らが道場破りをして売りつけた薬は、ガンや糖尿病、動脈硬化を著しく誘発させる物質を含んでいた」


白い煙の中、楓の声がまた聞こえて来た。

「ねえ、光君、そろそろいい?私嫌だけど」

光は少し笑った。

「でも、これが最適、全部吸い取るというか、絡めてもらおう」


光の言葉と同時に、白い煙が消えていく。

すると、ソフィーがいつの間にか、試合会場に降りていて、光と楓の隣に立っている。

ソフィーが試合会場の天井を指さした。

「ほら!あそこに!」

試合会場の天井には、恐ろしいほどの大きな蜘蛛、そして、その蜘蛛から真っ白い糸が、試合会場の天井全体を覆っている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます