第309話光は涙、放心状態に

光は、春奈に押し倒され、組み伏せられ、全く身動きができない。

すでに、完全硬直状態、置石状態になってしまった。


「光君・・・」

春奈は光の両肩を抑えている。


「はい・・・」

光は、気が動転しているようだ。

声もかすれている。


春奈は、さらに光に迫った。

「私だって、光君と抱き合って眠りたいの」

「一度だけ、同じベッドで寝たけどさ、あの時は光君も疲れてて、そのまま私も寝ちゃった」

「でもね、由紀さんとは、そうしたんでしょ?」

「どうして、私には、それがないの?」

「年増だから?おばさんだから?」

春奈は、光が答えられないようなことを、言い続ける。


光は、ますます硬直、うろたえている。


春奈は、光の背中に腕を回した、

そして、そのまま、上からかぶさった。


「光君」

少し言葉の響きがやさしい。


「はい・・・」

光の声が震えた。

かなり緊張しているようだ。

光の心臓がバクバクしているのが、春奈も自分の胸で感じている。


「すごく好きなの」

春奈は、腕の力を込めた。


「はい・・・」

光の声がかすれた。


「唇、欲しい」

春奈が、ゆっくりと、その唇を光の唇に寄せようとする。


・・・その時だった・・・


春奈のポケットのスマホが突然、大音量で鳴った。

春奈

「出ない」

「でも・・・」


光は、突然、硬直が解け、春奈のスマホを取り出し、春奈の顔の前に。

途端に春奈の表情が変わる。


「う・・・鬼母・・・この大事な時に」

ただ、春奈は「拒否」に失敗した。

焦りのあまり、通話をタップしてしまった。

そして、いきなり、春奈の母美智子の声が聞こえてきた。


「春奈!あなたね!」

母美智子は、最初から怒っている。

「何よ・・・何か用でもあるの?」

春奈は、光から、ようやく少し、身体を離す。



美智子の声が厳しい。

「あなたね、光君に無理やり迫っていないでしょうね」

春奈は、身体がビクン。

「え・・・どうして?」

どうしてわかる?と言いたいところであるけれど、さすがに、そこまでは言えない。


美智子の声がさらに厳しい。

「あのね、そういうことは、すごく慎重にしないといけない」


「うん・・・」

春奈は、少し冷静に戻る。

どうやら、「巫女力で読まれていた」のは、理解した。

それと、確かに、光をいきなり責めすぎたかなあと、反省もある。

自分自身でも、「衝動」にまかせてしまったと思う。


美智子は、声を低くした。

「あのね・・・男の子の、最初の時はね・・・」


「うん・・・」

春奈は光から完全に身体を離した。

そのままキッチンに歩いた。


美智子

「上手にできないと・・・」

春奈

「うん・・・」


美智子は、また声を低くした。

「すごいトラウマになるの」

「だから、無理やりとかはだめ、その上、光君だよ」


春奈はうなった。

「うーん・・・」

キッチンから、光の様子をうかがった。

光は、涙を浮かべて、放心状態になっている。

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