第304話夕食をほとんど取らないで待っていた巫女たち

ルシェールの胸の中で、顔をモゾモゾ動かしながら光は、必死に声を出した。

「ルシェール、あの・・・」


ルシェールは、「もうちょっと、このまま」と思ったけれど、ようやく光の顔を解放する。

「なあに?光君、顔が赤いよ」


光は恥ずかしそうな顔なので、ルシェールは心中、「よし!これで光君ゲットだ!」とガッツポーズをするれど、答えはルシェールの予想とは、少し異なっていた。


その光の答えは、ある意味、当然なもの。

「少しおなかが減って、のどが渇いた」


ルシェールは、「少し残念」と思ったけれど、体力が落ちている光に食事させるのも、当然なこと。

ただ、ルシェールが光に食事を一階から持ってくるには問題が大きい。

「それでなくても、私と光君の状況を、しっかり読んでいる巫女たちの目がうるさい」

「必ず、何か言われる」

「誰かが一言を言うと、それに続いて、アーダコーダと・・・」

ルシェールが、少し考えていると、光は立ち上がってしまった。


そして、ルシェールに

「ルシェールも食べていないのかな」

「一緒に食べない?」

と声をかける。


ルシェールは、これで、スッと気持ちが落ち着いた。

「そうだね、一緒に食べよう」

「それなら、何の文句も言われないはず」


さて、光とルシェールが一階に降り、食堂に入ると、テーブルの上には大きな鍋、少しグツグツしている。

また、他の巫女たちも、しっかりと座っている。


ソフィーがルシェールに声をかけた。

「ルシェール、お疲れ様、光君も起きられたみたい、さすがね」

春奈も、ルシェールに頭を下げた。

「ゆっくりと癒してくれてありがとう、光君も落ち着いている」


光は、全員に頭を下げた。

「みんな、今回もありがとう」

「ちょっと疲れちゃって、ルシェールに介抱してもらっていたの」

「とにかく、大変な戦いでした、お礼を言います」

ちょっとシンミリ系のお礼になった。


由香利が、立ち上がって全員にお礼。

「本当にお礼を言うのは私、厳しい戦いで、苦労を掛けてしまいました」

華奈も、弾かれたように起立。

「私も伊勢の巫女として、心より御礼申し上げます」


由紀が光の袖を引っ張った。

「光君、座って、魚介類のリゾットを作ったの」

「薄い柚子塩風味にしたよ」

キャサリン

「みんなで協力してつくりました」

サラ

「ギリシャにはない味、興味あります」

春麗

「こういう、サラッとした滋味って、中華には少ないから楽しみなの」


光は驚いた。

「みんな食べていなかったの?」


ソフィーが代表して答えた。

「えっと、少しは食べたけど、光君とルシェールを待とうってね」

「それで、煮込みを作ったの」


華奈が慎重に声を出す。

「でね・・・楓ちゃんがね・・・」

その瞬間、光はもちろん、全ての巫女の顔が、こわばることになった。

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