第302話恒例楓の大文句と姿を消した理由

その楓の顔が、大きくふくらんだ。

その顔を見て、華奈は耳を抑えた。

春奈は冷静に、耳栓を耳に入れている。

ソフィーはもっと冷静、モニターの音量ボリュームを抑えようとリモコンに手を伸ばす。


・・・が・・・間に合わなかった。


「あ・の・さ!」

「あなたたちだけ!美味しいお魚とか煮込みとか炊き込みご飯食べたんでしょ?」

「光君は、体力不足で食べられないのは、どうでもいいけどさ!」

「あーーーー気に入らない!」

「華奈ちゃんも何?」

「私が奈良の育ちだから、お刺身食べられないって、何事?」

「食べられますよーーって!」

「だって、伊豆の奈津美叔母さんの宴会で食べたでしょ?」

「それを忘れて、どうして、そういい加減なことを言うの?」

「あーーーー食べたかったなあーーーー!」


・・・・・・楓の食べ物への文句はすさまじい。


モニターを見ていられる巫女など、誰もいない。


春奈

「うるさいなあ、まったく」

ソフィー

「結局、光君が倒れたことの解説をするのはタテマエ、実は食べ物の文句を言いたいだけさ」

由香利

「なんか、楓ちゃん、顔がまた、丸くなった」

由紀

「うん、完全な、二重あご」

キャサリン

「最初は、あの文句が面白いと思ったけれど、最近はうるさいです」

サラ

「かといって、一言返せば、数倍になりそう」

春麗

「いや、数十倍だよ、きっと」


・・・・巫女たちが、下を向いて「懸命の抵抗」をしていると、モニターに映る顔が変わった。

楓の母の圭子が写っている。


「本当にごめんなさい」

「あまりうるさいから、排除しました」

「まったくねえ、食べることばかりで・・・」


春奈がようやく顔をあげた。

「え?圭子さん、どうやって排除したんですか?」

どうして、簡単に排除できるのか、まったく見当がつかない。


圭子は、情けないような顔で笑った。

「ああ、大したことじゃない、すぐ近くに、種類が豊富なお稲荷屋さんが出来たから、何か買って来てってね、お金渡したの」

「そしたら、飛ぶように出ていった」


華奈も奈良町出身、すぐに反応した。

「ねえ、圭子叔母さん、その御稲荷屋さんの近くに、お肉屋さんあるよね」


圭子は、「うっ」とした反応。


春奈も、奈良町出身、「事情」を読んでしまった。

「圭子さん、きっと、お稲荷さんと、コロッケも買ってくるかも」

「それでね、コロッケは二つ買って、店頭で一つ食べる」

「レシートをチェックしたほうがいいかもです」


由香利は、また気づいた。

「きっと楓ちゃん、コロッケとお稲荷さんを、私たちの前で、見せびらかして食べる気持ちかも」


由紀は首を傾げた。

「でもさ、お稲荷さんとコロッケってさ、合う?」


圭子が答えた。

「あはは、楓なんて、そんなの、なーーんにも気にしないって!」

「そういういい加減さが、光君にも欲しいねえ」


この圭子の発言には、巫女たちから、まったく反論がでていない。

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