第298話光はほとんど食べずにダウン

巫女たちは、豪華クルーズ船に準備された様々な豪勢な魚介料理に加え、自分たちの料理心が旺盛なため、煮込み料理やフカヒレ、炊き込みご飯などを作って食べることに余念がない。


しかし、光は

「見ただけでお腹いっぱいになった」

「その前に、由香利さんとお風呂入ったから、少しのぼせているかも」

などと、全く食べ物に手をつけようとしない。

結局、八部衆の神々のバンドに入って、ピアノを弾いたりしている。


その光の様子を見た金剛力士阿形が苦々しい顔。

「あれだから、体力がつかない」

吽形も同じ思いらしい、ただ、頷くのみ。


ポセイドンは、首を傾げる。

「昔の阿修羅の宿り子は、食欲はあったよ、あの子はあんな感じなのか?」

「さっきのメデューサ対策の話は、すごいものがあったけれど」


関羽将軍も口を挟む。

「横浜で特製粥を食べさせたんだ、阿修羅の時はいいけれど、人に戻った時の消耗が見ていられなくてね、少しは改善したみたいなのだが」


いつのまにか、将門公も加わってきた。

「神田の天ぷらよりは、蕎麦を選ぶ子なんだ」

「ウナギなんて、見向きもしない、子供の頃から見ているけれど」


地蔵菩薩も出現した。

「まあ、時折、食欲を示すことはありますよ、でも、まさに時折」

「高校一年生の頃なんて、小学生の低学年と同じか少ないくらい」

「夜にサンドイッチ一個だけとか、朝は水だけとか」


様々な御神霊が心配をする中、光が食べた食事は、巫女たちが持って行った地中海風魚介類煮込みを御椀半分、炊き込みご飯も茶碗半分、フカヒレを5cm四方くらい。


ソフィーも話に加わった。

「やはり、まだ心の傷が癒えていないのでしょうね」

「母親の悲惨な事故の原因で、いまでも、自分を責め続けている」

「東大寺で、母親の霊に出て来てもらったりもしたのですが」


地蔵も難し気な顔。

「あの子が、背負っているものは、背負わせてしまったものは、とてつもなく重い」

「しかし、それを、本当に支えきる人が、まだ・・・」

「巫女様方も、本当に献身的になされてはいるのですが」



さて、そんな話をしていると、光に変化があったようだ。


華奈が騒ぎ出した。

「光さん、目がトロンとなってる!」

「もう眠いの?まだ昼間だよ」

「ほらーーー!ちゃんと炊き込みご飯を最後まで食べて!」


春奈は、光の状態を察した。

「華奈ちゃん、無理だって、こうなると光君は、寝ちゃうだけ」

「いつものことでしょ?阿修羅から戻った時の、ダウン現象」


身体が大きく揺れ出した光を、ルシェールが抱えた。

「しかたないなあ、せっかくの豪華なご苦労さん会なのに」


光は、ボソボソ。

「あ・・・ルシェール、ごめんなさい」

「メチャ眠いの、ちょっと寒い」

「湯あたりしたのかな」

「頭がクラクラしてきた」

「でも、眠いや」

「ルシェール、ごめん、支えて」


光は、結局ルシェールに抱えられ、眠ってしまった。


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