第282話呪法の成就 由香利に抱きしめられる光

阿修羅からその姿を戻した光と、由香利は佃住吉神社の本殿に昇った。

そして、佃住吉神社の周囲を、江戸の大親分をはじめとして、子分衆ががっちりと警護につく。

また、その周囲を数多くの私服警官が取り巻いている。


鳥神カルラの背に乗り、上空に浮かんでいるソフィーは、その様子を見てため息をつく。

「うーん・・・子分たちの決死の思いが、半端じゃないなあ」

「命懸けても、住吉の本殿を守る・・・気高くもある」

「単なるサラリーマンの公務員では、あそこまでは出来ない」


同じように鳥神カルラの上に乗るキャサリンは、複雑。

「赤黒い泡が、ますます大きくなってきています」

「川沿いの芝も焼けはじめて、それが広がって・・・」

「その赤黒い泡は、私を責めるような気がして」

「無差別に無慈悲に大量殺戮を行ったアメリカを・・・」


ソフィーが、キャサリンの手を握った。

諭すような声で、

「キャサリン、今は、それを言っている時じゃない」

「まずは、佃住吉での呪法の成就が第一」


キャサリンがソフィーの諭しに頷くと、ソフィーは今度は厳しめな声。

「さあ、アーサー王、戦闘準備を」


途端にキャサリンの身体が輝き、銀の甲冑に身を包んだアーサー王が出現している。



光は、本殿の鏡の正面に立ち、両手を真横に開き、そして胸の前で合わせた。

由香利は、その光の動きに合わせて、不思議な呪文を唱え始める。


本殿の鏡が、輝きを増しはじめた。

すると、光の合わせた手から、白く輝く玉が浮かび上がった。

由香利の呪文は、ますます大きく、本殿内に響き渡る。


白く輝く玉は、空中を浮遊。

光の手の先から、輝く本殿の鏡へと向かう。

呪文を大声で唱え続ける由香利の身体が、震える。

由香利の額から、首から、汗が噴き出ている。


本殿内に、突然、鈴の音が大きく激しく響き渡った。

そして、白く輝く玉は、鏡の中に吸い込まれていった。


由香利の身体が、大きく揺れた。

その由香利の身体を、光がしっかりと支える。


由香利は、息が荒い。

「ありがとう、光君・・・」

その胸を激しく上下させて、光に抱き付いている状態になった。


光は、冷静。

「うん、由香利さん、呪法は完璧、さすがです」

「これから鏡を通じて、霊薬が隅田川と東京湾に流れます」

「と、同時に戦闘が始まるのですが」

そこまで言って、光は少し笑う。


由香利も光の気持ちを察したようだ。

少し笑って

「ねえ、光君も闘いたいの?」

「実は阿修羅様も」


光は、苦笑い。

「すごい軍勢だよね、こっちも・・・」

「金剛力士もいるし、八部衆、アルテミス、九天玄女様、媽祖様、関帝とその軍団、そして江戸の総鎮守の将門公とその軍団」


由香利は、息を整えた。

「じゃあ、光君は、それほど頑張らなくてもいい?」

光が、少し笑うと、由香利はうれしそうな顔。

そして、今度は由香利が光を思いっきりムギュっと抱きしめている。

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