第281話もう一体の参戦・・・将門公

隅田川上空に、二体の異形が浮かんだ。

その姿をキャデラックから見た光が、少し嫌そうな顔。

「あのおっさんたち・・・うれしそうに・・・」

「それにしても、ゴツイ身体だなあ」


その光を由香利がたしなめる。

「もう・・・そういうこと言わないの」

「金剛力士様ですよ、助勢に来られた」


由香利の父、つまり江戸の大親分は、目を丸くした。

「ほー・・・あのお二方ですか・・・」

どうやら、江戸の大親分にも、「見える力」があるようだ。

そして、感嘆しきり。

「すごいなあ、あんなに巨大化して・・・動きに全く隙がない」


少々、嫌そうな顔をして金剛力士二体を見ていた光は、目を別方向に転じて、今度はうれしそうな顔。

「ほお・・・彼と彼の軍団もお出ましだね」


由香利が光の視線の先を見て、驚いた。

「マジ?あれって・・・関帝様?関羽様?」

「それから、すっごい大量の軍団が上空に浮かんでいる」


江戸の大親分は、笑い出した。

「おまけに、われわれに手を振っていますって」


光は、笑顔から真顔に戻った。

「確かに、東京大空襲の哀念からの霊魂が赤黒い泡で浮き上がってきている」

「しかし、その哀念の霊魂は、東京、つまり江戸に住む子孫を滅ぼしたいなどとは思わない」

「悪神に操られてしまった、より哀れな霊魂なんだ」

「心ならずも、悪神に霊魂を支配され、愛する子孫を滅ぼす」

「そんなことを、彼らは望んでいない」

「救わなければならない、何としても」


由香利は、光の言葉の途中から、阿修羅が話していると実感した。

光の目の輝きも、すさまじいものに変化しつつある。


「ところで・・・阿修羅様」

いきなり、江戸の大親分が、光に対して「阿修羅様」と声をかけた。

江戸の大親分も、実は「阿修羅」を感じているようだ。


「うん」

光の声の質が、全く変わった。

低い声、強い声に変わった。

いつもの光の、ハンナリ声ではない。


「実は、また別のお方が協力をしたいと」

江戸の大親分は、クスッと笑う。


「そうかな、見ていられないのかな」

光は、そう言って両手を目の前で合わせた。

途端に、光は阿修羅に変化した。


江戸の大親分は、その頭を深く下げ、言葉を続けた。

「はい・・・将門公の責めがきつくて」

少し笑っている。


阿修羅は答えた。

「そうだな、江戸の総鎮守が出てこないわけには、いかないだろう」

「まあ、面白いことになるな」

そして、また別の方向の空を見る。


由香利が、阿修羅の視線の先を見る。

「すごい・・・まさに・・・馬に乗って鎖帷子・・・弓と大太刀・・・将門様とその軍勢」

由香利は、少々震えている。


その由香利に阿修羅が声をかけた。

「由香利さん、震えている場合ではないよ、もう佃に着く」

由香利がハッとして阿修羅の顔を見ようとすると、阿修羅は光に戻っている。

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